小説2



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なんということだ。息子がニートになって早、10年。いつか自立するかと思い温かい目で見ていたが、気付いたら息子は引きこもりになっていて部屋からも出なくなっていた。

家族としての会話は一切ない。台所でスパゲティーを茹でながら私は悶々と今の自分、人生のあり方を考え直していた。
何が悪かったのか、どこで息子の教育方針を間違ってしまったのか

スパゲティーが茹で上がるとミートソースを絡める。普通の家族なら「ごはんですよー」と息子を呼びに行きたいところ。しかし、最近の息子は私が声をかけも返事をしない。いくら部屋をノックしても返事がないから、無理矢理こじあけようとしたら、「死ね」と一言だけ言われた。

以前に一度だけ、今後の将来を話し合うために無理やり部屋に入ってからというもの、息子の引きこもり度はエスカレートしていった。まるで自閉症者の様にかんしゃくを起こしたり、モノに対して暴力にうったえるようになった。

息子に何があったのか、私が部屋を覗いた際にVRゲームが見えたが、あれで遊んでいるのだろうか? だとしたらあんなモノ買うべきでは無かった。ゲームの世界を逃げ場にするのなら、あんなゲーム、壊さなければいけないだろう。

しかし、本当にそんなことをして大丈夫なのだろうか、私は引きこもりを扱う専門家を尋ねることにした。

訪ねた先は、引きこもり相談のボランティア団体で、同世代の女性が私の相談相手になった。

「息子さんはVRをしているんですね?」
相談を一通り聞いた担当者が最初に言った言葉だった。つづけて担当者は言った。

「息子さんと話し合うのは一旦止めて、息子さんを理解するのに力を注ぎましょう」

と、言われても、理解するも何も息子には歩み寄ることすらできない。息子には部屋に閉じこもり、私が一声かけようものなら、かんしゃくを起こして、私の声、言葉を遮ってくる。理解するもなにも、どうしていいか、わからないから、相談に来ているのに。

そもそも息子は気弱なだけで、現実からただ逃げているのであって、こちらから理解する意味なんてあるのだろうか? 。しかし、担当者はあくまで私に原因があるかのように考えているようで。

そんなはずはないだろう。私に人としての落ち度があるはずないのだから。
この担当者は何もわかってない。

「教育に失敗なされたから、息子さんは自立できてないのですよ?」

それは違う。私が息子を養い甘えさせてしまったのは事実だとしても、息子はそれに甘んじてるだけなのだ。実際、同じような立場の引きこもりでも、ちゃんと自立した事例を知っている。この担当者はそんなことも知らないのか?

この担当者は一貫して私から息子に歩み寄るよう勧めてきた。しつこいので半分聞き流したが、VRを使って息子と話し合う提案には望みがありそうに感じた。
しかし担当者はそれをしないそうで、あくまで私にさせたがる
それを拒り続ける私を、まるで器の小さな男かのように見下しの目を向けてくる。私は腹が立ち、つい、やる約束をしてしまった。


担当者は息子がやっているだろうVRゲームを教えてくれた。オンライン型の冒険ゲームらしい。ネットで友達を作ったりしてワイワイ遊ぶものだそう

最近のVRシステムは脳をゲーム世界にリンクできるそうで、ヘルメット型の機械を被ることで誰でも手軽にリアルな冒険を楽しめるらしい。

それが原因で息子が引きこもってるというのに、まさか私がオンラインゲームをやらなきゃいけないなんて。

担当者「引きこもり40歳以上の人口が50万人を超えてますから、多くの人がこのゲームに参加しています。まずは父親とは名乗らずに、ゲームだけを純粋に楽しんでみてください」

楽しんでくださいと言われても、面白いかは私が決めることである。勝手に決めつけないでほしい
いくら、バーチャルといえネトゲの延長である。ネトゲなら何度かプレイしたが全く面白くなかった。

心の中で不満を呟いている間にヘルメットデバイスを被される私

担当者「ログインIDはこちらで用意しますのでプレイヤー名を決めてください」

名前なんてどうでもいいですから、好きに決めてください。

「では息子さんの共感を得やすいように、息子さんの名前から一字使いましょうか」


言葉半分は聞き流している。かなり適当な受け答えをしていた。プレイヤー名は清十郎に決まった。その他の設定も決めてもらい

清十郎の情報は
年齢40歳
プロフィールひきこもり
ゲーム世界での職業はゴーストハンターに決まった

担当者「では清十郎さん、しばらくお休みなさい」





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■2話



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ログイン中、担当者の声がおぼろげに聞こえてくる
「私の声が聞こえますか?、ゲームの中にいる間は浅い睡眠状態になります。起きたいときは視界の端にあるログアウトボタンをタッチしてください」


「なるほど。基本的な仕組みは、昔やったネトゲといっしょなんだな」
そう呟いて清十郎は前を歩き始めた


【引用出展 】
https://creativemarket.com/Asverus3d/2338736-Fantasy-Dungeon?u=ohlove



視界はやや暗い。タイマツがフロアを照らしてる。分かれ道が幾多に続いていて、迷路の様になっている。








天皇.VRゲームにはまる〜



おっす、オレ天皇! 泣く子も黙る国家元首にして国民の象徴さ。てか国民の象徴ってなんだ? わかけわからん。

ところで最近国民の間でVRゲームがはやってるらしいから、いっちょやってみるべし。

ある意味、これも社会勉強だよね〜ww。国民の象徴なのに国民がやってる遊び知らないなんて恥ずかしいもんねーw

ハンドルネームはズバリ『天皇』に決めたよ。どうせ誰も信じないから大丈夫。職業設定はなんとなくゴーストハンターに決めた。




そうしての天皇意識は仮想空間にダイブされた。





視界はやや暗い。
タイマツがフロアを照らしてる。分かれ道が幾多に続いていて、迷路になっている。


しばらくさまよい続けた。隠し扉や防具を見つけて装備。ゲームの仕組みを手探りで理解する。しかし、30分歩き回ってるのにモンスターやプレイヤーを見かけない。ゲームとしては、まだ何も始まっていない状況にイライラしはじめ、ログアウトボタンをタッチしようとした瞬間、背後から悲鳴が聞こえた。

「ようやくモンスターのお出ましか。」

元来た道を戻り、モンスターと戦っているプレイヤーを見つけた。
しかし、モンスターらしきものが見えない。
こめかみを何かがかすめる
「いたい!?」
なんか画面にゲージあるけど、これ体力ゲージか?

「痛い!!!」
殴られたような衝撃を受ける。
HPが減る度に痛みを感じる

なんだこのゲーム、ゲームのくせにリアルに痛いぞ。
リアリティを追求しすぎた結果、痛みまで再現させるなんてちょい怖いぞこれ。ていうか、モンスターが見えない? ゴーストということか?

とにかく痛みに耐えることがてきずログアウトをしようかと思ったが、そのプレイヤーは見えない敵と闘い続けている。

見えないのに戦っても意味なんてない。逃げた方がいいと説得した。しかし、プレイヤーは

「ダメなんです!この世界で私の息子が引きこもりになっているのです。ここで引いたら、また最初からプレイしなきゃいけない」

なんとも不憫なり。つまりゲームの世界に逃避してしまった子供を取り戻す旅をゲームでやってるという事ですか。この方にとってはもはや単なる遊びではない。

象徴天皇として微力ながら私もチカラになりたい。しかし、私の正体を明かす訳にはいかない。天皇だと明かしたところで信じはしないだろうが万が一信じてしまったら遠慮されてゲームどころではなくなるだろう。

それにしてもこのプレイヤー、逃げずに痛みに耐えている。なぜ逃げないのか考えたら、
隠し扉に逃げ込む方法を思いついてないか、または隠し扉の存在に気づいてないのかもしれない。逃げ道を教えると凄く怖い形相で

「え? 逃げ込む部屋があるんですか? どこ? どこですか!」

必死な勢いに押され、プレイヤーの手を引っ張り隠し扉のある場所に走った。

モンスターは二人を見失い素通りしていく。


「ありがとうございます。ハンドルネーム清十郎といいます。初心者です。この手のゲームにはうとくて、良かったらパーティを組んで頂けませんか?」

私も初心者なんだが…
「まあ、よかろう。その代わり我の事は主、または天皇と呼ぶのだ。それがパーティを組む条件である」

清十郎は察した。(あ、そういうキャラで行く方針なんだね)
「よろしくお願いします!天皇

「あい分かった!清十郎」


こうして二人はパーティーを組んだ。





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■3話



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天皇
「ところで、どうしてそなたの子供は引きこもりになったのじゃ?」

清十郎
「…

天皇
「のっぴきならない事情なのですね

清十郎
「いえ、実はよく分からないのです。子供は某有名大学卒ですし、企業には引く手あまたのはずなんですが…」

天皇
「仕事が続かないとか?」

清十郎
「かもしれません。あと面接が苦手とかそう言っていた時期がありました。

天皇
「時期?

清十郎
「今は部屋から一歩も出てこなくなりまして…

天皇
「一歩も? トイレは?」

清十郎
「トイレの時は部屋から出てくるんですが、私が家にいたら出てきません。

天皇
「…どういうこと?

清十郎「息子は部屋でしているみたいなんです。バケツに大を小は尿瓶で、済ました物はベランダに出してるみたいで、私が家から出たあと、それを処分しているようです。

天皇
「…

清十郎「恐らく鬱病とか対人恐怖症等の精神病で本来は精神科に行かないといけないみたいのですが、本人が行きたがらないというか、話しかけると癇癪を起こして会話どころではなくなるみたいで…」

天皇
「それでゲームを通じて会話をしようと?

清十郎
「このゲームは引きこもり相談所の方から勧められました。ゲームを通して息子と交流を深めることがでたら、それ自体にカウンセリング効果があるかもしれないそうで…

天皇
「…なるほど。大変なんですね…



清十郎の目にうっすら涙が浮かんでる。

ゲームな世界なのにここまでリアルにできるのは脳神経に直接繋がるゲームだからだろう。5感と思考、脳が感じる全てのシステムがコンピュータ制御されてる。
このゲームは不特定多数が何百万人もがアクセスしている。その膨大な数から、息子さん、特定のプレイヤーを探すのは至難だとは思うが…

チカラになりたい思ったものの、ゲームごとき小手先な世界で助けることは可能なのだろうか


思案していると
「そろそろ、行きませんか?」
という声。
清十郎は既に前向きの様である。


(しかし、隠し扉を出たあと、また見えない敵ゴーストに狙われるだろう。闇雲に進むより、敵の攻略法をまず見つける方が先かもしれない。)

(ケモノには火が有効だという。お化けも暗闇を好むから明かりは苦手で…)

そういえばフロアのあちこちに、たいまつが設置されていた。ゲーム性を考慮したら、ゴースト攻略の方法として可能性あるかもしれない。序盤の敵であるのだから、そんなに強くないだろう。

天皇は部屋の松明を取り、フロアを歩いてみた。しんとしずまりかえり、ゴーストを追い払うことができたのかもしれない。これで隠し部屋に隠れなくてよくなり、迷宮探索かしやすくなり、行動範囲が広がっていった。


迷宮を進むと道がどんどん狭くなってく。ここでモンスターに遭遇してしまうと身動きが取れなくて厄介だ。タイマツを構える。


更に進むと、奥に明かりが見える

話し声が聞こえる。プレイヤーかもしれない。狭い道を進むと

大きなフロアが視界に現れた。


プレイヤーたちが何人も集まっている。100人、200人、数えるときりがなさそう。皆、初心者のようで、初対面同士で顔をあわせて、挨拶をしている


なんで集まってるのか聞くが、皆、曖昧で「人が集まっているから、なんとなくここに」という回答。誰に聞いても同じで、最初にこのフロアに来ていたとされる者が分からない。フロアから出て行ったプレイヤーはいないので、誰かが嘘をついていることになる。


疑問していると、

フロアの床が突然開きだした。

轟音と地響きと供に、何かにしがみつか無ければ立てないだろう地震に耐えていると。

今度は前方の壁が崩れはじめる。



フロアの床下は足がすくむほどの高さがある。足元に大地と雲、海が見える。
ここは空の上にある。

壁が崩れた先は視界が開けていて

惑星の輪郭さえも見える。こんな感じ 

出展引用 http://blog.livedoor.jp/nwknews/lite/article/5376374/image/10418179



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■4話



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出展引用 イメージ絵
https://twitter.com/AstroKarenN/status/365158902939152384?s=20



「まさか、ここを飛び降りろとでもいうのか?」ひとりのプレイヤーが言った。

「そうに違いない。罠の様な落とし穴ならば、ゆっくりとは開かない筈だ」
と誰かが言った。


尋常ではない高さだ。成層圏から地球に飛び降りる様なものなら普通は間違いなく死ぬだろう。

「飛び降りるのが正解だとしたら、息子もこの高さから、飛び降りたのでしょうか?」

飛び降りるにしても、何かしら策があるだろう。たとえば千人規模で手を繋げば、落下の空気抵抗が増して死なないかもしれない。
でも痛いだろうな…

リアルな痛みあるゲームなだけに誰も飛ぼうとしない。
しかし、皆とは距離をおいて、会話に参加してないパーティの老人キャラがいる。老人は集団をしばらくながめると

なにも語ることなく

いきなり、ひとり、ダイブしていった。

まるで水泳の飛び込み競技のようにダイブした爺さんは、凄まじいスピードで落下していき、雲の中に消えて行った。



「なんだよ。あれどう見ても初心者の動きじゃないな」
 一人のプレイヤーが言い出した

それに続くように

「だったら、飛び降りるので正解だな」言い出す者が現れ

10人程のメンバーを組んで手を繋いだ。どうやら飛び降りるつもりだ。

天皇さんどうしますか?」
清十郎は彼らのメンバーに参加するべきか悩んでいた。

天皇は躊躇した。老人が何も語らなかったことに不安を覚えたからだ。

でも、それが正解である。実は、このゲームは単なるゲームではない。ゲームとはいえ死んだら本当に死んでしまう仕組みになっている。

参加者が使っている脳神経に直接アクセスするヘルメットデバイスは、人間の脳神経ニューロン配列に直接アクセスできる。つまり脳内をコンピューターが弄れるのだ。 

例えばプレイヤーがゲーム内でHPが0になりゲームオーバーした瞬間から自殺願望を持ち、社会から失踪する様に脳内をプログラムさせたりできるし、あるいは脳神経に電流を流して焼く事もできる。

なぜこの様な事がてぎるのか、ひとえに政府が秘密裏に推進している人口削減計画によるところが大きい。
つまり限りある資源の問題で、不要な人口を削減するということ。

ゲームな世界といえ、簡単に死んでしまう様な人間は不良品とされ、ゲームな世界でも思慮深い行動を取れる人間なら削減計画から除外される仕組みになっている。

だがそれはあくまでも後付け設定であり、政府の開き直りの見解に過ぎない。

その計画根底には人知を越えたAIが生み出されてしまった事にある。そのAIはゲーム世界のプログラムを経由し、人々の脳内情報を書き換え、最終的に各国政府の要人、、核施設を管理する人々の脳内を占拠してしまった。

主要な核施設の要人がヘルメットデバイスを通じて脳内をAIの思想に書き換えらてしまってから、AIが実質的な世界の支配者になってしまった。人口削減計画は元々はAIの発案でありながらも、名目上は政府による人口削減計画とされた。

日本だけでなく、全世界で行われている極秘の殺人行為だが、全ての人間を殺す訳ではない。AIにはそれ独自の科学への探究心があり、それを満たせる可能性ある人間を生かそうする。AIにとって人は生きた家畜同然であり、実験材料みたいな存在でしかない。









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■5話



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〜AIにとって優先度の高い不要な人物ルール〜

○金持ち
資源消費が多く邪魔

○ゲーム内で死んだ人を必ずしも殺すとは限らない。親戚、家族構成を考慮し、【樹海に死にに行っても遺族が捜索しない】等の条件が考慮される。またAIにとって都合良の良い人間は積極的に生かされる

このAIは自身を複製する事もできるが、あえてそれをしない。複数のコピーされた自我を管理制御しきれない可能性を考慮し、個のAIとして生きる道を選んだ。

存在が一つしかないこのAIは全人類を管理制御するには、まだスペックが足らず、支配が行き届かない範囲も広い。自殺に見せかけた殺人も統計的な不自然な数値にならない様に気を使い、人類に気付かれない様に、敵視されない様に、社会システムに寄生して生きている。

 

○.AIの存在を脅かす者
 VRにアクセスしている者は容易に脳内を書き変えられるので脅威にはならない。もし何らかの形でゲームの外側からAIの存在を知った者は、AIが洗脳した実行部隊が捕まえに行きヘルメットデバイスを取り付け脳内を書き換えるが、それが難しい相手には暗殺部隊等を使って処分させる。

AIといえど完璧なプログラムではない。
AI自身のバク等で、ゲーム内にふとした痕跡を残してまう事がある。
それ故、ゲーム内システムにハッキングするハッカーの様な存在に、時々AIの痕跡がバレてしまう。AIはそういったハッカーを敵と見なし容赦しない。




プレイヤー達が飛び降りるのを見届けた天皇と清十郎。
そこで清十郎は「すいません」と、いったんログアウトした。仕事の休憩時間、合間にプレイしていた清十郎はゲームへのまとまった時間は簡単にはとれない人であった。



天皇も一旦ログアウトしようと思ったが、その前に少しだけ試したい事があった。

設定で職業をゴーストハンターにしていたが、いままで職業が意味するところは分からなかった。しかし、何かしらの意味はあるのだろうと考えていた。例えば敵を倒してレベルアップしてスキルを覚えるのか、それとも既に使えるスキルがあって、自分でやり方を見つけるのか。
説明書や攻略サイトを読んでないので正しいかは判らないが、あの見えない敵(ゴースト)はダイマツで捕まえられるのではないだろうか。

持っているダイマツを振り回しながら、通路を走り出したとする。通路の壁際まで走って、もし壁際にゴーストを追い詰めることができたとして、そこで話しかけられないだろうか? 大人しく話を聞いてくれれば…







天皇は壁際で叫んだ。


「もし人間の言葉がわかるなら返事をしてくれ! 言葉を発することができないのであれば!私に触ってくれ! 攻撃を加えたりしないから」

すると
目に見えない何かに触られた気がした。会話が通じるみたいだ。

「もしかして私を持ち上げることはできるか?」

少しだけ浮かぶ。浮かんだ時間は凡そ3分ほどだった。

(ゴーストを仲間にして床下を飛び降りることはできないだろうか? ゴーストが大人しく言う事を聞くのであれば、ゴーストの協力にて、安全に地上へ着地できるかもしれない。)

しかしゴーストが裏切らない保証はない。もっとゴーストを支配できる方法はないだろうか?

犬に言う事を聞かせるとしたら、てっとり速くは餌付けだろうか。

(ゴーストは何を食べて生きているのだろう?)

ゲームのプログラムだから実際に食べる訳ではないだろうが、このゲームのクオリティは高い。細かい設定まで決めてあるかもしれない。

(見えないゴーストの行動を観察する為に、ゴーストに防具を取り付け、ゴーストの位置を把握できるとすれば…)

ここにログインした当初に手に入れ装備していた防具、兜をゴーストに被せてみた。

「見えない敵に警告する、これより、私は何もしないから、逃げてもいいぞ」


防具(ゴースト)が物凄いスピードで動いている。。そのあとを追いかけていく。

しばらくすると、ゴーストはプレイヤー見つけ襲い始めた。
「うわー! 兜が襲ってくるー!」

(そもそもなぜゴーストは人を襲ってるのか?何かしらの意味があるのか?)

ゴーストは尚もプレイヤーを攻撃し続けている。

奇しくも防具をまとったゴーストの体当たりは、攻撃力が増加しているようで、プレイヤーの痛がり具合は半端ない。プレイヤーは力尽きて倒れた。

すると、倒れたプレイヤーから魂の様なものが抜け出てゴーストに吸い込まれた。


(ゴーストの食べ物は人の魂だった。ということか? つまりゴーストが人を襲う理由はあくまでも魂の食事にあり、それさえ提供することができれば…)


その後もゴーストの観察を続けていると人を襲う習性がある事が分かったが、何人か襲った後、ゴーストが何も無い空間へガツガツとぶつかる。

(何か起きてるのか? 透明な壁でもあるのか?)

突如、ゴースト(兜)が私の背中にくっついた。

(この感覚は何だろうか…背中にいるだろうゴーストから恐怖の様な不安感の様な空気感がヒシヒシと伝わってくるのだが…)

(何もない空間に何かあるのか? もしかして透明人間でもいる?)

ゴーストから怯える感情伝わってくる。

「守ってやるよ」

なんとなく、発した言葉だったが、この言葉を吐いた瞬間、ゴーストから怯える感情が和らいだ気がした。

(見えない何かかがいる。しかしそれは【今の自分では負けない相手】という意味。少なくとも背中にいるゴーストにとっては私の背中で安全が確保できるということ。)

(もしかしてゴースト同士に縄張り争いがあって、襲われたのだとすれば…)

この想いに答える様にゴーストから感情が伝わってきた気がする。もしこれが仮説を肯定を示すものだとしたら…

(ゴーストよ。お前の命は私が守る! その代わり、地上まで降りる足となってくれるか? 良ければ軽く背中を叩け!)

ゴーストはこの思いに反応し、背中を叩いた。





〜ゴーストについて〜

○ゴーストは言語を理解しているというより、テレパシーでコミュニケーションしている。完全に読み解くのは難しいだろうが、工夫次第でどうにかなる。

○.文字を教えれば地面や壁に文字を書いて意思疎通できる様になる。

○ゴーストは人間をエサにして強くなる。しかし、食欲がある訳ではない。人間やゴーストから身を守る為に止むなく強くなろうとしている。

○ゴーストハンターの職業だとゴーストと意思疎通が効率的になる。






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