クロノ・トリガー『全体的にハリウッド映画を意識したもの』

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のバックアップ

 

作者:クロノファン2020

原作:クロノトリガー 
タグ:R-15 残酷な描写 クロノ・トリガー

タイムスリップしたマールを追いかけてクロノ
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この物語は原作設定と大きく異なります。年代設定は暦2020年。マールはクロノと偶然出会う訳ではなく、自らクロノにぶつかりに行きます。

第1話

「キャッ!」

リーネの鐘の下で、マールは友達候補を探していた。

王族としてのしきたりで、平民とは友達になれないのが悩みだったマール。ドラマや漫画の様な熱い青春と友情と憧れていたマールは、ついに狙いをつけ飛び込んだ。

 

マールは女優バリの演技をし、さもぶつけられたような態度でクロノへとぶつかった。

 

さり気なくペンダントを落とし、探している振りをして、あえてクロノに拾わせる。そうすることで「拾ってくれてありがとう!」を自然に言うことができ、名乗りやすくなる。

 

ぶつかった罪悪感による惹きつけ効果と恩着せ優越感効果の連携技を見事に利用したマールは、クロノを手中に収め、エスコートさせまくる。

正直いうと調子こいてた。だからこんな事になったのかもしれない。

 

「ここ、どこ…?」

 

マールがいたのは千年祭会場の裏山のトルース山だった。

 

事故なのか、単にテレポートに失敗したのか、、千年祭会場から離れた場所に転送されたマール。

 

「王宮が見えるから、そんなに遠くまでは飛ばされてないようね…」

 

クロノや会場のみんなが心配しているかもしれない。

マールは駆け足で山を降りた。

 

 

 

 

 

 

ークロノー

 

 

マールとは5分と間を開けてないから、急いで降りれば合流できるかもしれない。

 

山を降りると千年際会場敷地の裏側に出る位置だろうから、この位置ならマールも道に迷う事もないだろう

 

しかし、見えない。千年際会場がない。

リーネの鐘はある。ここにルッカや見物人が多くは居たはずなのに誰もいない。

 

夢でも見ているのか? だが自宅に帰ってみるも、家がない。家がないどころか、街自体おかしい。

大昔にある様な水車小屋や牧場、井戸。

まるで過去にタイムトラベルしたかの様な光景。

 

クロノは落ちてる新聞を拾った。

日付、ガルティア歴600年。クロノは400年前にタイムスリップしていた。

 

 

新聞の広告欄には大きく『戦争兵募集中』と書いてある。

 

「おい、あんちゃん。いい加減返してくれよ。拾ってくれたのは嬉しいけどさ…」

 

クロノは新聞を貸してくれた気の良さそうな男に、スマホに映るマールの写真を見せた。

 

※マールがタピオカミルクティーを買い食いしている写真。インスタ栄えを狙ったものでグッドな笑顔を見せている。

 

 

「あんちゃん! なんだこの鉄板!? 人が中に入ってるぞ!? おーいおーい!」

 

写真の技術すらまだ無い戦国時代の人間にスマホを見せたらどんなリアクションをするのか、クロノ自身想像はつかなかったが、マールを探すのに他に効率の良いやり方を思いつかなかった。

 

「さてはお前、魔族だな! 魔術で人をこの板の中に閉じ込めたな!」

 

クロノにはサッパリ意味が分からなかった。

魔族とは何? 何を言っているのこの人は?

 

「分からないふりしてとぼけるつもりか!さては人に成りすます魔族か!」

 

男は警笛を吹いた。民家に笛の音が鳴り響き、男達がぞろぞろと現れた。どの男達も農機具や剣を持ち、クロノに敵意を向けている。民家では男達を心配そうに見つめている女子供がいる。

 

「みんな取り押さえろ!」

 

クロノは突然の事で思わずしゃがみこんでしまった。

 

 

 

 

クロノはロープでグルグル巻きにされ、納屋に放り込まれていた。

外では人々が、「魔族が街に現れた!」と騒がしくしていた。

 

クロノに槍を向け、監視する男が2人。

しばらくすると、ギシギシという音が迫ってくる気配がし、監視する男と入れ替わる様に鎧姿の男が納屋に入ってきた。

 

男はクロノのスマホを手に持っている。

 

「おい、魔族! これは一体なんなんだ? 人をこの中に閉じ込めたのか?」

 

クロノは現代のスマホについて説明した。

 

「離れた人と話せる道具? 写真を撮る装置? …」

 

この時代ではスマホは繋がらない。

 

「はあ? 未来から来ただと? 意味の分からないことを…嘘を言うと為にならんぞ!」

 

クロノは写真の撮影のやり方を教えた。

 

「魔族の言葉に従うと思っているのか? 私に何かをさせて、私もこの中に閉じ込めるつもりなのだろう!」

 

 

男はクロノに剣を当てた。

「目的はなんだ! カネか? 人さらいか?」

 

 

「言わなければ痛い思いをするぞ」

 

 

「正体を見せないというなら…」

 

男は剣をクロノの首に強く押し当てた。

 

その時、外が騒がしくなる。

 

納屋の戸が勢い良く開き、ドレス姿の女が現れた。

 

「この者は魔族ではありません!」

 

女が言うと、男は跪き、外にいる兵士や町人も膝ずいた。

 

兵士「王妃様、恐れながら、この者はこのような不可解な物を所持し…

 

王妃「それは魔族がこの者に与えたもの。この者を罠に嵌めようとせんとしたのです。」

 

 

「この者は王宮の大切な従者、この者を即刻開放せよ。それからしばし、この者と2人になりたい。席をはずせ!』

 

兵士は踵を返し、納屋から離れた。

 

しばらく、沈黙し、王妃は突然、腹を抱えて笑いだした。

 

「クロノってば顔が面白いー!」

 

鳩が豆鉄砲を食らった顔をしていたクロノ

 

 

「はぁはぁはぁ。めちゃ緊張した! とにかく、落ち着こう私。

 

「私だよ。マールだよ。」

 

 

「おかしいよね〜。私、この街に来て、いきなり王妃に間違われて無理やり王宮に連れていかれて、ドレス着させられて…

 そしたら赤い髪をした魔族が出たって街で大騒ぎになってるって話を聞いて、すっ飛んできたの。

 私、一方的に間違われたんだから、ちょっとくらい王妃に成りすましてもいいよね。」

 

クロノは魔族に間違われて殺されそうになった。魔族について疑問が晴れなない

 

「私も見た訳じゃないから、良く判らないのだけど…

 とにかくここで長話するのあれだし、王宮に行こう。」

 

マールに連れられクロノは王宮に向かった。

 

 

 

 

〜王妃の部屋〜

 

マールは400年前、日付7月1日の新聞をクロノに見せた。現代では使われない活版印刷調で独特の紙質の新聞。その中には魔族と戦争記事か書かれていた。

 

 

 

マール

「私達が知っている歴史には魔族なんて存在しない。だからきっとここはガルディアに似た異世界なんだと思う。」

 

クロノはふるえていた。400年前にタイムスリップしたかと思ったら、別世界に転移していたのだから。

元の世界に帰る方法があるのか、心配になった。

 

マール

「クロノ、大丈夫だよ。きっと天才ルッカが助けに来てくれるよ。

 

 

マール

「でも、またクロノみたいに町の人達に捕まったら大変だから。私達が飛び出してきた山に戻ってみよう。ルッカを待っていようよ。

 

マールがそう言って外に出ようとした瞬間、光り包まれた。

 

困惑するマールとクロノ。

クロノがマールに触れようとするとすり抜けた。

マールはクロノの前から消滅した。

 

クロノは夢でも見ているのかと思い込み、ベットに座り横になった。

安定しない思考を物思いにふけることで解消しようとした。

 

異世界に来てマールが消えた。

タイムスリップしてマールが消えた。

王妃と間違われてマールが消えた。

本物の王妃は一体何処に行ったのだろうか?

 

クロノはそれらの疑問を頭の隅に置き、

マールの言葉を思い出していた。ルッカも自身と同じ様に魔族に間違えられるかもしれない。

 

ルッカがこの世界に来るかもしれない可能性を考慮し、クロノは最初にこの世界に出現した場所(山)へと戻った。

 

 

 

ルッカ

 

「あのバカ、カッコつけて無茶しやがって…」

ルッカは悔やんでいた。クロノを実験に協力さえさせなければ、あの様な事故に巻き込ませることはなかった。

最悪死んだかもしれない。ルッカは放心状態でマスコミにカメラを向けられていた。

 

マイクを向けられ、事故原因のコメントを求められ、デリカシーのない言葉が浴びせられる。

ルッカにはその言葉は耳にも届いていなかった。

ルッカはクロノが消失した場所に落ちているペンダントを眺めていた。

 

 

 

ークロノー

 

一時間程待っていると空間が避け、その穴からドローンが現れた。

ドローンにはロープとカメラが取り付けれていて、クロノの顔が撮影された。しばらくするとドローンが引き戻され、またしばらくすると、ドローンが戻ってきた。

 

ドローンにはメモが貼り付けてあった。

「クロノへ。ドローンの紐を身体に巻きつけて。引っ張り上げるから。」

 

クロノはロープを身体に巻きつけると、ロープを引いて合図をした。空間の裂け目をゆっくり進んで行った。

 

クロノが元の世界に帰るとマスコミからフラッシュを大量に浴びた。

マスコミは【少年が次元の穴が吸い込まれ死亡!】という記事を【少年が次元の穴に吸い込まれるが生還!】という記事に差し替える為に、忙しくしていた。

 

 

ルッカ

「…この様にある特殊な波長を出す装置を使えば空間の歪は開き続けます。これによる消費電費は実質0であり、任意の目的地までワープすることができるのです。であるからして、この研究の注目されるべきポイントは次元の歪同士の繋がりがどの座標と結ばれるのか関係性を特定し…」

 

 

ルッカはまるで事故の全てが終わったの様なスピーチをし、会場を諌めていた。

マールの存在を忘れているかのように。

 

 

ルッカの家〜

 

「え? マール? 誰のこと?」

 

「クロノの前には誰もテレポートにチャレンジしなかったわよ? みんなビビって挑戦しないからクロノがデモンストレーションして見せたのでしょう?」

 

「それにしてもクロノ、変わったペンダント持っていたわよね。あれが事故の原因になった訳だけど、あのペンダントがあったお陰で帰ってこれたのよ。もしあれがゲートの向こう側に行ってたら、今頃クロノは見知らぬ土地で…

 

 

「ペンダントに使われている鉱石の波長がゲートを開くキーになってたから、その波長を再現するだけだったから簡単だったけど…不思議よね…あのペンダントだけはゲートに飲み込まれないのだもの。クロノが残したあのペンダント、一体何なの? 

 

 

おしゃべりなルッカを遮る様にクロノは今日あった出来事を伝えた。

 

ルッカは魔族等の話は半信半疑で聞いていたが、王妃に関して考えを述べた。

 

「400年前の王妃といえば、リーネマンデラガルディアね。歴史ネットによるとリーネマンデラは王妃に即位後、盗賊に襲われて誘拐される。、当時護衛をしていた7人の兵士は盗賊に殺されるか行方不明になってる」

 

「興味深いのは、リーネ王妃が誘拐されて3日後に盗賊のアジトから逃げ出し、街をふらふらしているところを兵士達に保護されるも、なぜがその日にもう一度、行方不明になる。だけどそこから3日後、リーネ王妃は盗賊のアジトから脱走し王宮に戻ったという。盗賊のアジトとされていたのが聖マノリア教会で…」

 

 

「マールとリーネの顔が瓜二つで、リーネと間違われ、マールは王宮に入った。その後、クロノの前から光に包まれてマールは消えた…

ありえるとすればリーネの子孫がマールだった場合ね。リーネそっくりなマールが現れた事でリーネの捜査が打ち切られてしまう。リーネは誘拐されたまま殺される運命を辿り、未来に生まれる筈だったマールが存在しないことになって、クロノの前から消滅した…。色々と疑問点があるけど、クロノのいう魔族の話も、もしかしたらこの誘拐事件に関連してくるかもね…」

 

「魔族が人間に化けられるなら、リーネを誘拐した後、リーネの顔を研究してそっくりに化ける事が考えられるわ。リーネに化けた魔族が王宮に入り込む計画があって、その計画途中だとしたら…。」

 

「魔族にとってリーネの顔を研究し終わるのが今から3日後…になるかしら? リーネが殺されるのもその日という事に…」

 

 

 

 

クロノは立ちあがった。

 

「ちょっとどうするのクロノ! まさかあのゲートをくぐって助けに行く気? 

 

クロノは頷いた。

 

「その顔はマジね。なら今すぐにでも準備しないと。3日後にリーネが死ぬと言ったけど、あくまで推測でしかないもの。今すぐに行動しないとね。」

 

ルッカは大きなリュックに色々詰め始めた。

 

「勿論私も行くわよ! 異世界? タイムスリップ? ワクワクが止まらないわ!」

 

 

ルッカはアンティークとして飾られていた刀をクロノに渡した。

 

「向こうの世界は銃刀法違反なんてないんでしょ? だったらどれだけ武装してても文句は言われないわ!」

 

 

ルッカとクロノはゲートへと飛び込んだ。

 

 

 

夜、山中。2人は懐中電灯を頼りに進んだ。

 

電気を消すと全く何も何も見えなくる。月明かりさえない林の中を降りていく。

 

街には各所に松明があり、山を降りると懐中電灯が無くとも道に迷う事は無かった。

 

2人は酒場に入りマノリア教会の場所を聞き込みをした。

 

「お、お前は昼間の怪しい奴!」

 

クロノは男達に取り囲まれた。

 

「あの時は、王妃様の知り合いとは知らず、無礼を働いた。だがあの後、王妃様はまた行方不明に…。王妃様は部屋から忽然と消えなさった。しかも、王妃様の部屋から最後に出てきたのは、お前らしいじゃないか! やっぱりお前は魔族なんじゃないのか! 王妃様を騙して、誘拐したんじゃ!」

 

 

ルッカ

「いい? 誘拐犯人が堂々と酒場にくる訳ないでしょ? 王妃様は部屋のドアから出たんじゃないわ。窓の外から出た。そうとしか考えられないわ。

 

男「確かにそうだが…。王妃様の寝室は5階にあるのだぞ? そこから出たというのか?

 

ルッカ「魔族は空を飛べる者もいるんじゃない? 5階から連れ去られるなんて造作もないことじゃなないの?‐」

 

 

 

男「確かにそうだが… だがこの男は昼間、板の中に女性を入れていたのだぞ?

 王妃様を板に封印して持ち去ったのではないのか!」

 

ルッカスマホを取り出して撮影した。

 

 

男達はパニックを起こした。

 

 

「これは魔族の落し物よ。なんでも写すことができる…魔族世界の道具らしいわ」

 

 

男達は封印されなかった事に安心し、クロノ達の話を冷静に聞き始めた。

 

ルッカ「最近、変わった事はないかしら? 特に教会の方で…

 

 

「そういえば、最近、教会に誰もいないのにピアノの音が鳴るな…

 

 

 

 

男に案内され、教会へ向かった。

 

教会ではシスターが祈りを捧げていて、ピアノの前にはシスター長がいる。

 

ルッカ

「シスター、聞きたい事があるのだけど、貴方魔族ですか?」

 

 

シスター長

「え? どういう事でございましょうか。

 

ルッカ

「このスマホで撮影すると本性が見えるんですよ。

 

 

ルッカはシスターの顔面を撮影し、画質を高解像度モードにした。

 

 

「人間を真似するといっても、完璧に真似る事はできないはず。だとしたら、人間に特有でない魔族特有の痕跡があるはずでしょう。例えば魔族が爬虫類系であるならば…」

 

ルッカはノリで行動していた。魔族を目撃した事はない。何となくの行動で、まさか目の前に本当に魔族といわれる者が存在しているとは思いもよらなかった。

 

ルッカが講義をしているとシスター長は既に本性を表していた。下半身が蛇で上半身が人間の化け物に変化していく。

 

「キサマ今何をした! 私に奇っ怪なものを見せ、呪文の様なもの唱えた! 私に何を…何をしたー!」

 

蛇魔族は怒り狂い大口を開け、ルッカが被ってるヘルメットにかぶり付いた。

ルッカにダメージは無いもの、驚きのあまり失神してしまう。

 

 

クロノはルッカの命知らずな態度に青ざめつつ、刀を抜き振るった。

 

ここへ案内した男は悲鳴を上げながら出口から逃げようとするが、シスター4人が通せんぼした。

 

クロノは剣道をたしなむが、真剣は始めてだった。ふんぶん振り回すも、蛇特有の動きの速さで捉えきれない。

蛇特有の動きで壁を伝い、天井にへばりつくシスター長。

口から硫酸の様な毒液を吐き出した。

肩に掛かると服が焼ける様に溶けていく。

 

クロノ達はとてつもなくピンチだった。

 

 

 

 

ーグレンー

 

私は王宮騎士グレン。城から忽然と姿を消したリーネ王妃の捜索にあたっていた。

街では、魔族の落し物である魔具を拾ったという二人組が話題になっていた。その内一人は、王妃失踪を知るかもしれない最有力容疑者で、王妃の部屋から最後に出たとされる赤髪の男。

 

その二人はなぜか王妃を探しに教会に向かったというが…

まさかそんな所に王妃が? 疑問に思いながらも、私もそこへ向かった。

 

 

 

 

「やけに教会が騒がしい…」

 

グレンは教会の異変を察知し、木に登り、二階の窓へと飛び移る。中の様子を覗いた。

 

魔族が5体、既に女性はやられている。

赤髪の男は交戦している

 

グレンは2階から飛び降りた。

 

 

 

ークロノー

 

クロノは呆然と立ち尽くしていた。

上から突然カエルの化物が降ってきて、蛇の化物を次々となぎ倒していく。

魔族同士の仲間割れなのか、とにかく、クロノ達は助かった。

 

「すまない。遅れてしまって…。まさか教会に魔族が潜んでいるとは…」

 

カエルはルッカが死んでいると思い手を合わせた。

 

気絶から目を覚ましたルッカはカエルの顔をみて高速で後ずさりした。

 

 

「悪いがこの容姿は、呪いをかけられたものでな。本当の姿は人間なんだ…

 

ルッカは頭の整理が追いつかない。

 

「呪いって何? 魔族はそんな事までできるの?」

 

 

 

 

「お前達は一体何者だ? 王妃様を誘拐した犯人なのか?

 

「違うわ。私達は失踪した王妃様を探してここに来たら、人間に成りしました魔族に出くわして襲われたの。

 

「ここでか!? 

 

「ええ、そうよ。恐らく王妃様はこの教会のどこかに閉じ込められていると思うわ」

 

クロノ達は手分けして教会を探したが、リーネはどこにもいなかった。

 

「恐らく隠し部屋があるはずよ」

 

「何故そう思う?

 

「部屋の広さと外から見た建物の広さが合わないの。恐らく、どこかに隠し部屋に繋がる通路があると思う

のだけど…

 

クロノは鍵盤に赤い血が着いている事に気付いた。

 

ルッカ「そういえば貴方、誰もいないのに教会で音楽が鳴ると言っていたわね。どういう音楽か覚えている?」

 

ここへ案内した男が覚えていたメロディーに沿って、赤い鍵盤を引くと、隠し部屋へ続く扉が現れた。

 

 

カエルは扉をゆっくり開けた。6畳程の部屋があるが、誰もいない。足元がしなり、底の板が薄い。調べると地下へと続く階段が見つかる。

薄暗いがランタンにより照らされる部屋。

階段を降りると、寝台にリーネが寝かされ、もう一人のリーネが立ってこちらを見ていた。

 

もう一人のリーネは笑いながら、顔形が崩れていく。ドレス姿のリーネの形は大きく膨張し、3m級の茶色のゴキブリの様な姿に変わり、カエルに襲い掛かった。

 

ゴキブリの牙とカエルの剣が弾き合い、カエルは壁に追い詰められる。

 

 

クロノは意を決して、刀を振るうが、硬い殻に弾き返されてしまう。

 

「クロノ!」

 

ルッカはリュックから工業用オイルスプレーを取り出してクロノに渡した。

 

クロノはルッカの指図のままゴキブリにスプレーかけた。

 

ゴキブリに変化はない。

 

「クロノ、いいから空になるまでそのまま続けて」

 

ルッカは外に出て、町を照らしている松明を持ってきた。

 

 

クロノはそれを受け取り恐る恐るゴキブリに火をつけた。

 

ゴキブリはオシリから勢い良く燃えた。変温動物なのか、直ぐには燃えてる事に気付かずに、下半身の動きが鈍くなっていく。

 

ゴキブリ魔族

「な、なんだ…何が起きてる…

 

ゴキブリは火を消そうと地面にゴロゴロ回ろうとするが、3mの巨体だと狭い地下室内をゴロゴロと回れない。

ゴキブリはリーネの姿に変身して地面をゴロゴロと回った。

火は消えず、周りを巻き込み、地下室は燃え始めた。

カエルは寝台までジャンプすると、寝ているリーネを抱えて飛んだ。

階段を登り、教会から出ていく。

 

程なくして火ダルマになったリーネゴキブリが教会を飛びだし、井戸の中に飛び込んだ。

井戸から這い上がると、巨大なゴキブリの姿に戻り、林に向けて逃げた。木に登り、森の真上を駆けながら、山へと消えた。

 

クロノ達は井戸の水で教会の消火をした。

 

 

マールはリーネの部屋にいた。

消えていた頃の記憶は無かったマール。さっきまでクロノと部屋にいたはずで、昼間であったはず。外を見ると兵士達が騒がしくしていた。

「もしかして、クロノがまた捕まったのでは?」

マールは急いで部屋を出た。

 

 

城内ではマールが行方不明とされ、慌ただしくしていた。

 

「リ、リーネ様!? 

 

リーネの部屋を守っている兵士は困惑していた。昼間に密室の部屋から忽然と消えた王妃が、今また忽然と現れたのだ。

 

「リーネ様! 一体今まで何処にいらしていたのですか! 王宮はリーネ様を探して大変な騒ぎになっています!」

 

兵士は廊下にいる従者にリーネの無事を報告し、従者は急いで王に知らせに行った。

 

 

「さあ、王妃様も、王様の元へ」

 

兵士達に連れられ、マールは訳がわからないまま、一階広間へ行く。

 

広間ではガルディア王21世とリーネ王妃が王座に座り、クロノ、ルッカ、カエル、町の男に、リーネ救出の感謝の言葉を述べられようとしていた。

 

マールがそこに鉢合わせする。

 

王族、大臣、兵士達の動きが止まった。

 

少しの間があった後、マールとリーネを兵士達が取り囲み、剣を向けた。

 

兵士

「王妃様、申し訳ありませぬ!」

 

 

「まさか、大臣…どちらかが、偽物ということか?

 

大臣

「魔族がどちらかに成りすましているとすれば、王妃様しか知らぬ質問をすれば…」

 

ただのそっくりさん。そう説明しても、マールを開放してくれる空気ではなかった。

 

たとえそれが真実だとしても、王家はマールを魔族容疑者として扱い、幽閉し、監視し、王家としての保身を図ろうとするかもしれない。

 

面倒になる可能性。

 

ルッカはこの可能性を考慮し、教会の消火をカエルに任せ、急いで王宮へと戻った。

 

 

門番の時点でクロノ達は通れなかった

 

だが待っていると従者を引き連れてマールが現れた。

 

「詳しい事情を話してる暇はないの。直ぐに戻らないと。」

 

マールは走れる用意ができていた。ドレスを脱ぎ捨て、クロノ達と共に走りだした。

 

クロノ達を追いかける兵士との鬼ごっこが始まった。

 

 

ルッカはゲートホルダーを複数用意していた。

壊れて帰れなくなるかもしれない事態の想定。

あるいは次元の穴が不安定になって、皆がバラバラの場所に飛ばされるかもしれない。

マール、クロノにそれぞれゲートホルダーを渡した。

 

「ゲートの中にいるとき、絶対捨てちゃ駄目だからね!」

 

 

〜現代〜

 

 

クロノ達が元の世界に戻ると、強いライトに照らされ、前から見えなくなる。

 

目を凝らすと、ヘリが目の前にあり、ガルディア軍人が二人立っている。

 

白ひげの大臣が二人の間から現れた。

 

マール

「じい、どうしてここが…

 

大臣

「マール様、探しましたぞ…。ささ、王宮へかえりましょうぞ」

 

マール

「じい…私…

 

大臣

「置き手紙の件なら心配する必要は在りませんぞ。王様もマール様が帰って来られるのであれば、他に何もいらぬと仰られておる。

 

 

マール

「クロノ、私、実は家出してきたんだ。王宮のしきたり嫌になってそれで…

 今日は楽しかった。色々とあったけど、ありがとう。

 ルッカも助けに来てくれてありがとう。

 またいつか会おうね…」

 

 

マール

「あ、そうだ。私のペンダントのことだけど…

 

ルッカ

「それなら私の自宅にて厳重に保管しております(嘘です。作業台に無造作に放置されてます。)。これから持って参りましょうか?

 

マール

「いえ、その様な手間を掛ける訳には…

 

大臣

「マール様、あとでジイやが取りに参りますので。

 

マールはクロノ達に別れを告げるとヘリで飛び去って行った。

 

 

「さすが王族…家出娘の出迎え方がパネェわ…

 

 

「クロノ、覚えておきなさい。あのヘリにいずれ貴方も乗る事になるのだから。」

 

 

 

「玉の輿のチャンスよ、クロノ。まめに連絡することよ?

 

「え? マールの連絡先を知らない? マールは携帯電話を持ってなかった?」

 

「ヘリは持てど携帯は持たない…。王族は一般人とはとことんズレてるわね…

 

「さあ、私達も帰りましょうか。」

 

 

ルッカのブースは非常線が張られていいて、警察が警備をしていた。

クロノとマールは次元の穴に吸い込まれてルッカがそれを助けに向かった事になっていた。

ルッカの帰りを待っていたマスコミがどっと押し寄せた。

 

 

マスコミ

「二人目の救出おめでとうございます。まさか、もう一人次元の穴に落ちたのまさかマール王女だったとは…。いつからこの事に気付かれて?」

 

ルッカは二度目のマスコミ対応に追われた。

 

車内、クロノはガクガク震えていた。

魔族に襲われ、硫酸を浴びたり、戦った事を思い出していた。

 

ルッカ

「それにしても魔族って何だったのかしらね…。マールが消えた事といい、400年前の時代と今に繋がりが無い訳ではないと思うのだけど…

 

 

ルッカは、400年前の新聞をリュックから取り出す様にクロノに促した。

クロノはリュックの中をゴソゴソする。

 

 

 

 

 

〜クロノの家〜

 

ジナ

「まあ、ルッカちゃん。今日は本当に凄い日だったわね〜。世界に中継された超次元転送マシンの実力! ルッカはちゃんはこれから先、世界中の企業や投資家からもてはやされる事になるわね。

 

ジナ

「ほら、クロノも今日のあれがテレビに写ってるわ。ほら! 次元の穴にキュイーンと吸い込まれる!

 

ルッカ

「あの時は流石に腰が抜けたわ。クロノがあんな命知らずな人間だとは思わなかったし、

 

 

ジナ

ルッカちゃん、あの後、顔面蒼白よね。クロノが女の子を助けに行っちゃうんだもの。ジェラシー感じちゃうわよね〜

 

ルッカ

「お、おばさん! 何へんな事を言ってるんですか! 私は単なる幼馴染です。

 

ジナ

「そういって、顔を赤くするところ。クロノと一緒で昔から嘘が下手よね〜

 

ルッカ

「ち、違いますって! おばさん、トンチンカンな見方しないでください! 私が顔面蒼白してるのは、単にクロノが死んだかもしれないと思っただけで。

 

ジナ

「そーなーのー?

 

ルッカ

「そうです! あの時は事故を受けれられなくてパニックしてて。平静を取り戻すのに精一杯だったんです。

 

ジナ

「そんなにパニックしてたの? あんまりそういうふうには見えなかったけど…

 

ルッカ

「清水の舞台から飛び降りるじゃないですけど、欄干にでも立ってる様な気分でしたね…。

 

ジナ

「いつも冷静沈着なルッカちゃんが、そこまで…

 

ルッカ

「あの時は本当にやばかったです。まあ、でもクロノが落としたペンダントを見つけて、発明のブレイクスルーになると思って、その後は割りと平常心に戻ったというか。好奇心に突き動されてどうにかなったというか。

 

ジナ

「クロノのお陰で平常心を取り戻した訳か…

 

ルッカ

「おばさん…またそういう言い方を、

 

ジナ

ルッカちゃんは、クロノの最有力お嫁さん候補なんですからね。おばさんは期待しているわよ。ルッカちゃんにも選ぶ権利はあると思うけど、おばさんは、クロノの嫁にはルッカちゃん一択しかないと思っているの

 

ルッカ

「はいはい、分かりましたよ。クロノを選択肢の一番下の方に置いときますんで。

 

ジナ

「ところで今日は泊まっていかないの?

 

ルッカ

「流石にもう大人なんで…それに近所なので帰りますよ。

 

ジナ

「えー。久しぶりにルッカちゃんと一緒に寝んねしたいよー

 

ルッカ

「おばさん、私もいい加減に大人なので、人様のお母様ともうそういう関係には…

 

 

 

その頃、クロノは新聞記事を読み込んでいた。

記事内容を要約すると

 

○西部魔族の特殊能力、人に化ける能力を持ち、その力で近隣の国々が制圧された模様あり。表面的には人による独裁政権に見えるが、内情では人間を食べる為の家畜にした植民地政策をしていると報告あり

 

○西魔族はガルディア本土でも各所に目撃され、官民一体となって対策し要警戒をすること。

 

○南部魔王軍は相変わらずガルディア本土に向けて挑発行動をしている。もし東西北の魔族が手を組んで合同で進行されると今のガルディアには勝機はない。兵人員を早急に増やす事が急務とされる。

 

○リーネ王妃が失踪して3日目。兵員1000名を使い人海戦術で捜索するも手がかりなし。失踪当日、リーネ王妃は護衛7人を連れて山中を散歩中に従者4名、護衛7人と共に行方不明となる。魔族による仕業だとすれば国の維新に係わる大問題であると共に、魔族がガルディア本土に潜伏している事も意味する。西魔族に対する警戒をより一層に強くしなければならない。

 

 

 

 

ーマールー

 

大臣

「ところでマール様、次元の穴に吸い込まれた先は何処に繋がっておられたのですかな? じいはマール様が帰って来られてからというもの、その事ばかり考えてしまうのです。」

 

 

マール

ルッカにはゲートの先を内緒にしろって言われたのだけど実はね、私達、異世界に行ってたの。信じられないと思うけど私達400年前のガルディアで魔族…といっても私は見た訳じゃないのだけど、クロノ達が魔族と戦って私を助け出してくれたの。

 

大臣

「ま、まぞく? まさかその様なものが、過去の世界に居るなんてことある訳が…

 

マール

「そうよね…。だからきっとあの世界はこの世界とは違う、パラレルワールドみたいなものだと思うの。でも凄くない? 異世界なんだよ? ファンタジーだよ。

 

 

大臣は震える手でどこかに緊急のメッセージを飛ばした。

 

大臣

「ま、マールディア様…落ち着いて聞いて欲しい事があるのですが…。決して誰にも言ってはならぬと約束できますかな…。 

 

 

大臣は真剣な顔で過去の歴史をマールに語った。

 

400年前にガルディア及び世界の殆どの国々が、人に化ける西側魔族によって侵略され統治されたこと。魔族は人間を食料として確保する為に、魔族の存在そのものを歴史から隠蔽し、表面的には人間にとって暮らしやすい社会を作ったこと。

西側魔族は人間を独占する為に、東南北魔族の情報を人間側に売り渡し、人間と共にそれらの魔族を滅ぼしたこと等を説明した。

 

 

この歴史は権力ある一部の人間しか知らず、もし、知るはずのない者が、魔族の歴史を公に語るなら、その者に身に危険が及びかねず。マールも例外ではなく、決して語らない様に念を押した。

 

マール

「ちょっと待って、じゃあ、クロノやルッカはどうなるの? 絶対に魔族の事を喋らない様にこの事を教えてあげないといけないんじゃ。

 

大臣

「安心して下さい。今、王家の秘密の組織がクロノさん達を保護しに向かっております。」

 

 

ークロノ自宅ー

 

ヘリの騒音が響く。

クロノ達は家の外に出てマールの到着を出迎えた。

 

ルッカ

「マール様、一体どうなれたのですか? ペンダントの事でしたら私の自宅に…

 

マール

「そうじゃないの…

 

マールは王家の秘密の組織が到着するのを待っていられなかった。直接、危険を伝えにやってきた。

 

クロノ達が現状を理解する頃、

マールと大臣、クロノ、ルッカはテーブルでジナの用意をしたお茶を飲んでいた。

 

大臣が茶をすする、ジナは奥の部屋から煎餅を持ってきた。

 

大臣は煎餅をボリボリ食いながら説明した。

 

「…であるからして、権力者やその周囲には人間に成りすました魔族が多くて、彼らは権力者やその親族を人質に取り、政治を裏で操っています。

彼らは国家権力を使い、人さらいをして、人間を食料としているのです。

 

 

ルッカ

「そんな馬鹿な! いくら国家権力が関わってても、そうやすやすと人が居なくなったら、周りの人間は気付くでしょう?

 

大臣

「ですから、魔族達はターゲットを絞っているのです。友人や身内がいなかったり、失踪しても誰も気にも留めない者を選別しているのです。

 

 

ルッカは失踪届けの統計を調べた。

ガルディア国内だけで、年間の行方不明者の件数が10万件を超えている事に気付いた。

 

※日本の行方不明者数は年間8万件

 

ルッカ

「そ、そんな…。こんなにも人が居なくなってるのに、誰も気にも留めないの…

 

大臣

「失踪した住人の居たアパートの管理人等が、便宜的に失踪届けの手続きを警察にするだけで、警察も深くは捜索しません。魔族は催眠術を使ったり、人の記憶を消したり、魔法を使ったりもできるので、警察は事件があったことすら認知しません。

 

ルッカ

「なんで大臣はそんなにも詳しいの? 王家はこの事を知っているの?

 

大臣

「マール様を含めて王家は一切関与していません。関与しているのは…」

 

大臣の先祖は400年前から、魔族に王族を人質にとられ、人間誘拐の仕事をさせられていた。その仕事は現代にまで続いていて大臣は人さらいの実行及び責任者をしていた。

 

マール

「そ、そんな…ジイやが、人殺しに加担を…

 

大臣

「申し訳ございません。マール様や王家の者を守るには他に方法がありませんでした。

 

ルッカ

「…未だに信じられない。」

 

クロノはだかしかしと思った。

自分達はゲートを使って過去に行く事ができる。そこで魔族に勝って歴史を変えてしまえば…

 

 

マール

「そうだよ!クロノの言う通りだよ。私達で世界を変えちゃえばいい!

 

ルッカ

「…なるほど…。ただ指をくわえて魔族を蛮行を黙認する必要はない訳か…

 

 

三人は立ち上がった。

 

 

大臣「ま、まさかマール様も行くのですか!  

 

マール「当然よ! だって私はこの国の王女。民を守るのは当たり前ことよ!

 

大臣はマールの言葉聞いて覚悟を決めた。

 

大臣「マール様が公務を放棄し、王宮を不在にすること…なんとかして誤魔化しましょう。ですが行かれる前に王様に無事な顔だけは…

 

マール

「わかったわ! クロノ、マール、私は一旦帰るけど、また後で来るから。」

 

マールはそう言って王宮へと戻っていった。

 

だが、大臣はマールを幽閉した。

子供を危険な地に行かせる訳にはいかない。マールを王宮に帰らせる為に話を合わせただけだった。

 

大臣は王家の秘密の部隊に過去に向かわせる様に手配した。

 

だがその日、秘密の部隊は過去に行く事なく、血に染まった。

人間に成りすました魔族が大臣の周りに張り付いていた。

大臣は魔族から脅され、罰としてクロノと親、ルッカとその親族を差し出す様、要求される…

 

第2話

 

「なんだか嫌な予感がするわ…」

 

ルッカは気がかりだった。王家の大臣は400年にも渡り、人さらいの仕事をさせられていた。それまで魔族に一切抵抗せず、常に従順であったはずが無い。何らかの抵抗を試みるも、失敗し続けた結果の400年であるはず。

 

 

ルッカはクロノの家に電話した。

万が一に備え、直ぐにでもジナを連れて家を出られる用意をする様にと。

 

 

ー早朝5時ー

 

玄関のチャイムがなる。スーツを来た男が一人。

 

怪しすぎる時間に訪ね人。魔族ならその特徴が身体のどこかに現れるかもしれない。だが普通の人間の可能性もある。大臣が人さらいの責任者として、人間も実行部隊として仕事をするということもあるかもしれない。

 

玄関を開け、念の為、男を撮影して確認する。

 

 

 

〜魔族〜

 

いつもの仕事、いつものライフワークをする。そういう気持ちで玄関のチャイムを鳴らした魔族。いつもなら早朝の時間に玄関から入ろうとすると家主は警戒して直ぐには入れない。

 

正面から入れない場合、この魔族はいつもの様に念力を使い。内側のロックを外して入る。

 

屋内に入た後は家屋にバリアの魔法をかける。家人はどんなに悲鳴をあげようが外には聞こえず出られない。

家人がパニックしている間に麻酔銃で眠らせて主な仕事は終了する。

 

だがいつもと状況が違った。アシュティア家は待ちわびた客の様に魔族を向かいれた。

 

「雑誌の記者の方ですよね? お待ちしておりました。」

 

そう言ってルッカは自室の研究室に魔族を案内した。

部屋に招かれると突然、カメラのシャッターを切られる。何をしているかと思えば眼画像の拡大してチェックし始めた。

 

(さすが天才発明家のルッカ。目の付け所がいい。だがその弱点は私の様な魔族にはないぞ…)

 

魔族は銃を取り出すとルッカを撃った。

 

 

 

 

父タバンは魔族の話を聞いたが半信半疑。信じる事ができなかった。タバンはルッカの提案にて別室にて研究室内での一部始終をカメラを通して見ていた。

 

ルッカが倒されたのを確認したタバン。もしもの時の為にルッカから教えられていた手順は

 

1.ジナを連れて車に乗り込むべし

2.クロノの家に行き、ジナとクロノを回収するべし

3.千年祭のゲートから中世へ逃げるべし

4.暇があるなら警察に電話を

 

教えられた手順にはルッカの救出項目は無かった。

 

「我が娘ながら無鉄砲過ぎるぞ…」

 

タバンは娘を信じてジナの部屋に向かった。

ジナは足に障害がある。おんぶして玄関を出ようとする。

魔族は物音に気付いて近寄ってくる。

 

「動くな! 動いた瞬間、死ぬぞ」

 

タバンは銃を突き付けられる。しかし、これは嘘。

この場で殺せば証拠も残るし肉の鮮度も落ちる。

脅す事に意味はなく、家人の恐怖の顔が見たかっただけ。この魔族の趣味といえるものだった。

 

「死ぬのはあんたよ…」

 

魔族の後頭部に鈍い音が響く。

 

ルッカは防弾ベストを着ていて難を逃れた。忍び足をして鈍器の様なもので叩いた。

 

「背後ががら空きだったわ。脅しなんて悪趣味を持っててくれて助かったわ…」

 

魔族が気を失った事で家にかけられていた魔法のバリアが外れた。

 

クロノもルッカのアドバイスに習い、魔族を倒していた。

ルッカと少し事情が異なったのは、招き入れられた魔族は玄関から入った瞬間、ジナによって後ろからフライパンで殴られた。

 

だが、ルッカが倒した魔族もクロノが倒した魔族も気絶たものの直ぐに起き上がって追いかけてきた。

 

クロノとジナを車に載せ千年祭のゲートへ向かうが、二匹の魔族は空を飛びながら、追いかけてきた。

武器も持たず、魔法でエネルギー弾を飛ばして、クロノ達を攻撃してくる。

 

止む負えず千年祭会場にクルマごと突っ込んで、中世へと逃れたクロノ達

 

ルッカのブースから車が消失したこと。次元の穴に逃げた事は魔族側に見られていた。ゲートから戻ると待ち伏せされているかもしれない。一行は、山を降りて、ガルディアに保護を求めた。

 

頼みの綱はカエルである。リーネを助ける事に手を貸したのを知っている。カエルを呼び出して保護を求めた。

 

 

 

〜王宮の外〜

 

「こんな朝早くに呼び出しやがって…」

門番に呼び出され、カエルがやってくる。

 

 

「昨日は大変だったんだぞ。教会の火事をほったらかして、どこに行ってたんだ?」

 

ルッカ「色々あって何から説明していいのか…

 

「ところでリーネ様はちゃんと帰ってる?」

 

 

カエル「ああ、リーネ様は無事に帰られた。

 

ルッカ「私達、リーネ様を助けたからお礼とか貰えるわよね?」

 

カエル「何を寝言を言っている? 王妃様を助けるのは国民の義務。恩を求めるとは恥を知るがいい。」

 

ルッカ「何よその言い草! 私のオイルスプレーが無かったら今頃リーネ様も貴方も死んでたかもしれないのよ。」

 

 

カエル「リーネ様は神に選ばれたから助かったにすぎん。己を過信するでない小娘よ。」

 

ルッカ「礼儀しらずのカエルさん。私は小娘でないく、天才発明家ルッカ! 覚えておきなさい!」

 

カエル「ふん、そちらこそ、目の上に対する礼儀がなってないぞ」

 

ルッカ「目の上? 貴方年齢は?

 

カエル「今年で40だ。

 

ルッカ(え! パパと同い年!?)

 

 

ジナ「あのう。お取り込み中悪いのですが、カエルさんは何を食べていらっしゃるのですか?」

 

ルッカはジナに耳打ちした。

「おばさん、ここにくる前に呪いを受けたって説明したばかりじゃない。その呼び方は失礼なんじゃ…」

 

 

カエル「クロノの母上殿か…。私は構わん。カエルと呼ばれる事には慣れている。好きに呼びなさい。

 

ジナ「ではカエルさん。私達、朝早くドタバタしていたもので、お腹が空いております。よろしければ厨房等を使わせていただければ…」

 

ジナは家にあった冷蔵庫の中身を大量に引っさげていた。

 

カエル「厨房か…。王宮の厨房はコック以外は立入禁止なんで、すまないなが…。

 

「ところでどうして厨房等と…まさかお前たち、住いが無いのか?」

 

ルッカ「う、う、う、。そうなの…。私たち、借金取りに追われて」

 

嘘無きに騙されるカエル。

 

 

カエルの男気スイッチが押された。王宮騎士として放っては置けなかった。

クロノ達が貧乏にて一家離散になるような不幸は避けたかった。

 

 

カエルによる顔パスにて門番はクロノ達を通し、厨房へと案内した。

 

「厨房には入れないが、飯は食べさせて貰えるから」

 

 

 

 

 

カエルはクロノ達が食べるのを見ていた。

 

「街で噂になっていたが、お前達はこの国では見ない顔らしいな…。故郷はここから遠いのか?」

 

ルッカ「凄く遠いよ…(遠すぎてどうしょうもないくらいに)

 

カエル「ならガルディア最南のパリポレあたりか…砂漠を超えてくるのは大変だったろう。」

 

ルッカは適当に話を合わせた。

 

カエル「あの辺りは私の故郷がある。」

 

 

ルッカ「カエルの姿で砂漠を越えられるの?」

 

カエル「そりゃ越えるさ、流石に昼間は無理だがな…

 

ルッカ(ガルディア南部に砂漠地帯? 未来には砂漠なんて無かったはず?)

 

カエル「お前達は仕事は?

 

ルッカ「してないわよ。

 

カエル「まだ決まってないのか…。

 

ルッカ「実は私達、泊まるところはおろか、オカネも持ち合わせてないの…」

 

ルッカは嘘泣きをした。クロノはそれを悲しそうな目で見た。

 

カエル「よし判った! お前達の住居は私が世話しよう。一先ず男性陣は私と同じ兵舎でいいとして、女性陣は従者用の…。」

 

 

クロノ達はカエルのコネで当面の生活基盤を確保した。

だが王宮実力ナンバーワンの騎士、カエルの来客としてである。想定以上のもてなしを受けることになり、クロノ達は居心地が悪くなる殆周囲に気を使われることになる…

 

 

 

 

 

〜その日の深夜〜

 

「サイラス!」

 

カエルは夢にうなされていた。サイラスが死んだ日、サイラスは燃やされ、跡形もなく消された。20年も前の事なのに未だにカエルの心を蝕んでいた。

 

まだ日も上がりきらない暗い朝。

カエルが悪夢から目覚めると兵舎が慌しかった。魔族国を監視していた偵察兵の知らせで、魔族ビネガーが率いる屍軍団、総勢1万体が砂漠に向けて進行を始めたという。1週間後にガルディア本土へと繋がるゼナン海峡に到着し、本土決戦が予想されるという。

 

騎士団長は砂漠の前線にて防衛任務に当たるメンバーを募集した。カエルはそれに志願し、3000の兵士が日の出と共に出陣した。

 

王宮と町は警戒態勢になる。

 

タバン「なあ、ルッカ…。この戦争ってどうなるんだ?」

 

ルッカ「学校で習ったわ。D.C600年のガルディアの歴史だと、アルメリアという隣国とゼナンの橋で戦争衝突する…。一ヶ月以上の戦いで両者に多大な損害を出すもものの二年後、ガルディアの反撃にあい、アルメリアはガルディアの領地になる。でもこの歴史は魔族により捏造されたものだから…」

 

 

タバン「どのみち大勢が死ぬ事になるんだな? だったら…」

 

 

タバンはゲート前に置いてきた車を兵器に改造しはじめた。

 

歴史上この戦いはガルディア軍は防戦を強いられ、5000の兵士が亡くなる。

 

 

 

 

ー現代、王家の邸宅にてー

 

 

「もう! これだから王族なんていやなのよ!」

 

 マールは外出許可を申請するもののセキュリティサービスの対応は遅かった。邸宅の門は固く閉ざされ、マールの意志で外に出る事ができない。公務のスケジュールで明日には出られるかもしれないが、大臣が手を回しているとすれば、その公務さえもキャンセル扱いになるかもしれない。

 

「もう! クロノ達と過去に行く約束をしたのに! いつになったらここから出られるの!」

 

大臣がヘリで庭に着陸した。

 

「ちょっと、じい! 貴方また私をここに閉じ込める気…」

 

 

大臣の焦点は定まらず、顔が青ざめていた。

 

「申し訳ありません…」

 

魔族の指示でクロノ達を生贄に捧げなければならなかった大臣。だがクロノ達を捕獲する事に失敗した。その償いにマールを生贄に差し出せと要求された大臣。

 

マールを生け贄に差し出しても魔族がマールに成り済まして生きる。人の記憶を操る魔族がいて、周囲の人間は誰一人として偽マールに疑問を持たない様にできる

 

 

〜邸宅内〜

 

大臣はマールと王に逃げる様に持ちかけた。

 

 

「まって! 逃げるならジイもいっしょに…」

 

 

 

大臣「私は大丈夫です。長らくしてきた魔族とのお付き合い、殺される心配はないでしょう。マール様を逃がせば、次は王様を差し出すよう要求される…。王様、マール様と共にご無事であらんことを」

 

大臣は護身用の武器と逃走用の荷物を二人に渡した。千年祭のゲートから過去に逃げる計画。

二人は準備を終え、ヘリに乗り込んだ。しかし操縦士は発信しなかった。

 

操縦士は魔族側だった。

操縦士は魔族に変身した。

 

大臣がピストルで応戦しつつ

二人は走ってにげた。

 

あてもなく

庭の中を逃げる

 

邸宅にいる従者は次々に魔族へと変身した。

 

この日を楽しみにしていたかの様に裂けた口からヨダレを垂らしている。

 

大臣は操縦士に食べられた。

 

広大な敷地の庭で魔族による王族狩りが始まった。

 

二人は外へ出る道がない。隠れる様に逃げた。

 

 

 

庭にあるプランター。植物達のお陰で、ギリギリ、魔族の死角に隠れていた二人。

 

もう逃げられないと絶望したとき。

視界が歪んだ。 

目の間に空間が揺らいでいる事に気付く。

タイムゲートの特徴に似ている。

ルッカに預かったままのゲートホルダーを使い二人は次元の穴へと飲み込まれた。

 

 

 

 

 

ー未来ー

王とマールはDC2300年の世界に来ていた。

 

 

ゲートから出た先で2人は世界を見回した。目に飛び込むものは一面コンクリートの残骸。

 

ビルや街の亡骸といえるような死んだ都市の地平線が見えた。

 

眼前に広がる文明の墓と、砂の大地の地平線がある。

 

鳥は1羽すら見えない。緑もまったくない

 

ここがもし自分達の未来だとしたら、人類は滅んだということかもしれない。

 

 

未来のマール親子

北に30分程歩く。

体力的な事を考えると、これ以上進むの危険かもしれない。。大臣が用意してくれた荷物に数日分の食糧はあるが、この世界でもし食物が手に入らないなら元の時代に戻るしかない。

 

自宅には人間に成りすました魔族ばかり。門への出入り口も魔族に監視されているはず。戻るにしても大きな危険を伴うだろう。

 

いくら歩いても景色は変わらない。荒廃した世界が地平線に広がっているだけ。

これ上進んでも意味がない。

戻ろうとしたとき、後ろから声をかけられた。振り返ると目に飛び込んだのはロボットだった。

 

 

 

「ワタシとスピード勝負、シマショウ!」

 

 

 

ロボットはスピード勝負を持ちかけた。

 

よく見ると、遠くの方から他にもロボットが駆け寄ってくる。

 

ロボット達は車を抱えてやってきた。

 

 

 

ロボット「スピード勝負、あなたが勝ったら、車あげる」

 

 

マール「負けたら?」

 

 

 

ロボット「スピード勝負、あなたが勝ったら車あげる

 

 

 

マール「このロボット…壊れてるのかな?

 

 

 

レースをしたいロボット達。遊びたいのに可哀想。というマールの意向で父王は勝負する事に。

 

「パパがんばれー!」 

 

今にも壊れそうなボロ車。なぜ、ロボット達はこんな訳の分からない遊びをやるのだろう。

 

ロボットが乗ってる車はもっとボロ車だった。ハンデのつもりだろうか?

 

微かに見える道路跡をただひた走るレース。そもそもどこがゴールか教えて貰ってない。

 

 

本当になにもない世界だった。

 

 

 

核戦争が起きたとしても、こうはならないだろう。原爆が落ちた広島だって原爆ドームは残っている。

 

 

あるのは瓦礫しかない。建物らしきものは見当たらない。

 

山には木すら生えてない。

 

ガス欠の予感がしてマールの元に戻った。

 

ロボット達も戻ってきた。

 

再勝負の申し込みを繰り返してきたが、、勝負を断っても、ついてくる。

 

 

王はマールを車に乗せ、ゲートのあった場所へ戻った。

 

 

元いた場所の地面。砂に隠れて気付かなかったが、地下に繋がるハッチの様なものを幾つも見けた。

 

 

ハッチを開けて中を覗くと、白い物が山積みになっていた。

 

何かの資材かとハシゴを降りてみると、白骨化した遺体の山だった。

 

 

そこはある種の核シェルターの様なもので、人々が避難生活をしていた名残りだったのだろう。食料が尽きて人々は餓死したと思われる。

 

他にもハッチも開けてみたが、どれも同じで、この時代の人々の遺体が散乱していた。

 

 

この時代では人は生きていない。2人が諦めたとき、異音のするハッチを見つけた。

 

 

 

中はベルトコンベアーが流れるロボットの工場だった。

 

 

ハッチを開けて階段を降りるとコンピューターの端末があるが操作しても使い方が分からない。

 

端末にエラー画面が現れブザーが鳴る。突然、けたたましいサイレンがなり、侵入者を排除する為のロボットが襲ってきた。

 

 

 

ロボットはレーザービームを二人に向けて攻撃してきた。

 

当たれば火傷では済まされない。

 

 

急いでその場から離れ、ハッチを閉めた。

 

 

二人はまた別のハッチを開けたが、そこは大丈夫だった。遺体もなく、襲ってくるロボットもいない。奥に進むと、コンピュータールームを見つけた。

部屋には動かないロボットが一体転がっている。

 

二人は操作してコンピューターの画面を開いた。

 

 

データベースノアXYという画面が表示された。

 

「私はデータノアXY、データベースに情報をインプットする場合は画面のXをタッチし、。 データベースにから情報を引き出したい場合Yをタッチしてください…

 

 

「これは情報端末みたいね。今、歴何年かな?

 

 

ノア 「現在、西暦2300年です」

 

 

二人は荒廃した世界の原因を調べた。

 

600年に魔族が召喚魔法にて破壊神ラヴォスを呼び出したというものだった。ラヴォスは千年以上地球の中に眠り続けて、ある時、目覚めて世界を破壊したというものだった。

 

 

ラヴォスって何なの? 人はいないの?」

 

 

ノアにより分かったのは

 

ラヴォスのサイズ。直径1km、推定50万トンの特異生物であること。

 

ラヴォスは1999年に大地震と共に地中から這い出て、天に向かって光を放った。

その光は天から降り注ぎ、世界を砂と瓦礫の大地に変えた。光の熱で99%の人々が一瞬で消滅し、残りの1%も殆どが重症になり死に絶え。現在の人口は1010名…。

 

マール「魔族の人口は?

 

ノア「魔族の人口は701人です。

 

 

マール「ノア、魔族ってそもそも一体なんなの?」

 

 

 

「魔族とは人間と共に遥か昔から地上に生息していた生き物。中世期600年代までに人間文明と不毛な戦争を行った後、西側の魔族王フリューゲルスが北西大陸ギリイス首都を制圧すると人間との共存を始めました。」

 

『私達、魔族に狙われてるの。身を守る為の役立つ情報ってないの?』

 

マールは魔族の弱点情報を手に入れた。

 

 

ー魔族の弱点ー

 

 

1、中世紀頃の魔族は総じて知能の低い者が多く、挑発等で冷静さを失うと行動に大きな隙が生じる。

 

2、人間に聞こえない特定の周波数帯の音が苦手な種族が多く、音波攻撃が有効。

 

3、多くの種は寒さに強い一方で熱に弱い。(化石調査から氷河期に人類文明が衰退している隙に縄張りを広げたとされる。)

 

4、忍耐力がない。酸欠や水により呼吸を奪えると効果的

 

5、魔族を弱らせる伝説の剣、グランドリオンを使う。(詳細不明)

 

 

 

マールが端末にかじりついていると、父が声をかけた。

隣の部屋がおかしいという。

見ると地面に変わった図形の紋様が描かれている。

その紋様はゆらゆらと動いている。

 

紋様の上にタイムゲートが存在していた。

 

 

 

後編

 

【ハッシュとマールのQ&Aコーナー】

質問「時の狭間って何ですか?」

 

回答「ちょっと説明しにくいが、タイムゲートの出口がない場合に辿り着くところ…かのう。」

 

質問「ここに来た後から、ゲートを潜ると必ずここに辿り着くみたいですが…

 

回答「そなたがここに来たいと求めれば、ここに来れる様にと魔法をかけておいたんじゃ。」

 

質問「最果ての部屋にゲートが整頓された様に並んでいますが、ゲートは最初からそこにあったのですか? 」

 

回答「無の空間故にタイムゲートは元々無かったのう。

 

質問「ではどうやって並べられたのですか?

 

回答「並べたというよりも作ったんじゃ。

 

質問「具体的にどういうこと?」

 

回答「無の空間といっても、ここにやってきたからには入り口があるじゃろ? その入り口とを魔法で結んで、分かりやすくゲートのシンボルを置いたんじゃ」

 

質問「この場所を放棄してゲートから出ようとは思わなかったのですか?」

 

回答「最初はワシもそうするつもりだったんじゃ。しかし、未来のゲートからワシの兄が迷い込んできてのう。兄はガッシュというんじゃが、ガッシュもまたラヴォスによって時の彼方に飛ばされたんじゃ。兄は未来の世界から元の時代に戻れるゲートを探していてここにやってきた。兄はワシの様な魔法のセンスはなかったから、もしワシがこの世界に居なかったら、兄はここで死んでいたじゃろう。ラヴォスがワシら以外にもジールの民を時の彼方に飛ばしたとすれば、兄の様にここに辿り着くやもしれん。故にワシはここで見張っとるんじゃ。」

 

質問「兄のガッシュはどうしているの?」

 

回答「未来の世界でタイムマシンの開発に没頭しとる。

 

質問「ご飯はどうしているの?」

 

回答「基本的にはガッシュがゲートをぐぐって食物を運んできてくれる。

 

質問「奥の部屋にスペッキオという役立たずの生き物がいるけどあれは何?」

 

回答「あれはガッシュが連れて来たんじゃ。原始時代で恐竜に襲われている所を助けたら懐かれたらしい。じゃが、ガッシュはタイムマシンの研究に没頭してスペッキオの相手を全くせん。しょうがないからワシがここで面倒を観とる。まあ、ワシも一人は寂しいから丁度いいのう。」

 

質問「わたし、魔法覚えられないの?

 

回答「魔力無き者でも魔法を使える様にする…。できない事はないんじゃが、身体の造りが違うからのう。できても副作用があったりで危ないんじゃ。諦めた方が良かろうて。」

 

 

 

 

ゲートを抜けると目の前に老人の顔があった。

 

マールと父は驚いて腰を抜かした。

老人も驚き転げる。

 

原作とは違い、時の最果て老人は100年ぶりに人間を見たような派手なリアクションをした。

 

「お前さん達は何者じゃ!? ジールの民じゃないのか!?」

 

二人は首を傾げた。

 

「なんじゃ…。てっきり助けが来たと思ったが…」

 

 

マール「ここは一体…」

 

 

老人「ここは時空狭間じゃよ。ワシは時の最果てと呼んどるが…。まあ、そんな事はどうでもいい。ここにはどうやってやってきた? そなたらゲートを越える魔法が使える訳でもあるまいに…」

 

マールはゲートホルダーを見せた。

 

老人「そうか…。やはりお主らはジールの民ではないのか…」

 

老人はジール王国について語り始めた。ラヴォスラヴォスが生み出したゲート、それに飲み込まれてこの世界にやってきたこと。ラヴォスが目覚めて世界がどうなったのかを知りたがっていた。

 

ガルディア33世「ジール王国なんて聞いた事ない名前…。本当にこの世界の話なのですか?」

 

老人「そうか…。歴史にジールの痕跡すらないか…。」

 

 

時の賢者ハッシュは、歴史から忘れられた古代についてを詳しく説明してくれる。魔神機の実験からラヴォスが目覚めた事。ラヴォスゲートに巻き込まれて最果てに飛ばされた事等教えてくれる。

 

魔族との戦いについて聞くと、ハッシュはアドバイスをした。

 

「昔の人は魔法が当たり前の様に使えた。お主らはその力が退化したのだろう。時を越えて古代人を連れてくる事ができるのなら魔族とやらを倒せるかもしれない。」

 

原作とは違い、クロノ達は魔法を覚える事ができない。時を越え、古代人を探す事でハッピーエンドを迎える。

 

タイムゲートは原始、古代、中世、現代、未来へと全て開通しているが、最果てから古代へのゲートだけは時空の流れが不安定で入る事ができない。どこかの別の時代から古代へと入れるゲートがあるかもしれない。古代人を探すなら、各時代をくまなく探すといいとハッシュにアドバイスされる。

 

マールは600年に向かいクロノ達を追い駆けたい。だがハッシュは中世へはついては来れないという。

 

時の狭間は元々無の空間であり、空気も何もなく生命の維持ができない。ハッシュは魔法の力でそこを生存可能な空間に作り変えた。

ハッシュは自分と同じ様な被害者が現れない様にと、この最果て世界を維持し続ける必要があり、外には出られないという。

 

 
〜中世〜

ビネガーが本土に上陸するまであと5日。クロノは無力だった。戦争が迫る中、カエルの客人として丁重に扱われる。この時代で何もしないなら、ただの足手まといの存在である。

 

剣道で鍛えていたクロノ。こういう時に力を発揮しないなら宝の持ち腐れである。

 

城下では多くの民間人が剣の素振りをしている。剣の無い者は槍、槍が無い者は斧。斧がなければクワ。それが無い者はカマや包丁を振るう。

 

クロノも混じって素振りの練習していると、タバンが車に乗って山から降りてきた。

ブルドーザーの様でいて戦車の様に改造された車。険しい山道を降りてくる。

 

人々はその光景に驚くが、魔族が作り出した魔法道具を奪った事にすると、すんなり受け入れられた。

 

車の中にはマールとその父親が乗っている。

 

「実はさっき、二人がゲートから飛び出してきたんだ」

 

マールはリーネに間違われない様に髪型を変えていた。

 

 

 

〜王宮〜

 

ルッカ「…という事はマールと王様は未来に行ってきたのね…。そして魔族は火が弱点…」

 

「でもビネガーとその軍勢は違う気がするわ。砂漠を越えてくるのだもの。恐らく熱や火は弱点ではないかもしれない。とすれば…」

 

「音波攻撃が有効? でも前線からの報告ではビネガーは骸骨や屍を超能力で操って攻撃している。屍(ゾンビ)に超音波は通用しないだろうけど…ビネガーの魔力は阻害させられるかもしれない?」

 

 

骸骨には直接なダメージを与える方法はあるのか?

戦争といえば砲弾だろうが、この時代にはまだ火薬を精製する技術がない。少なくとも100年先の技術である。

 

現代に戻って火薬を調達する事は、魔族の目があり困難。可能だとしても大砲がこの時代にあると未来で起こる幾多の戦争の歴史が大きく変化し、現代にまで大きな影響があるかもしれない。

 

「取りあえず超音波装置を作ってみるわ。」

 

100年先の技術を持ち込めば、人々は真似して作ろうとして歴史は大変動するだろうが現代のハイテク技術ならば理解も真似もできないから歴史は変わらない。

 

 

ルッカ「お父さん。超音波装置って作れるかな? 

 

タバン「車に燃料も道具も沢山積んであるからな。やってやれないことはない。」

 

 

 

ルッカとタバンは超音波装置の開発。

クロノは戦い向けてイメトレ。

マールは…

 

大臣から受け取った荷物の中にはハンティング用のボウガンが入っていた。山や森に逃げたとき、野生の動物を狩って生活しろという意味であろう。

矢は繰り返し使えるので、銃の様に弾数を気にしなくていい。矢にロープを取り付ける事で取りに行かずして回収できる。マールはボウガンを的に当てる練習をした。

 

 

 

ルッカ「後は西の魔族の問題ね…」

 

マノリア教会で蛇魔族の顔を撮影した際、黒目の部分が人間特有ではなく、猫や蛇の様に縦線目になる事に気付いていたルッカ

 

クロノ達は小型カメラを使い場内に潜んでいる人間に化けた魔族を調査した。

 

 

ルッカ「魔族は王宮の政務官7名と従者20人、兵士20人だったわ。そいつらを制圧する方法を一つ考えてみたのだけど…」

 

ルッカの案は騎士団長に相談し協力を求める事だった。

 

騎士団長「なるほど。このスマホという魔族の落とした道具を使えば、人間に化けている魔族が判る訳か…」

 

団長の主導で、西魔族を掃討する隠密兵隊が作られた。

 

 

クロノ達は未来から得た情報、魔族に効くというグランドリオンについても聞いた。

 

騎士団長「あれは行方不明なのだ。最後にグランドリオンを所持していたのはサイラスという勇者だが、彼は21年前、魔族討伐に旅立ってからそのまま帰って来なかった。恐らくは…」

 

恐らくサイラスは魔族に殺され、グランドリオンは魔族に奪われている。そう団長は考えていた。

 

 

〜本土決戦〜

 

ビネガーは5000を超える骸骨兵士で橋を占拠した。

 

結論から言ってルッカとタバンの発明はあまり役に立たたない。ビネガーに超音波は通用しない。ブルドーザー的な戦車は機動力がなく、体当たり力にすこぶる低能で山を登ったり、土砂を運搬するのに便利でも戦闘には全く役に立たない。

 

だがビネガーはそれらを兵器として警戒した。

骨とゾンビを集め30mを超える巨人を作り出し、大きな腕振りをして近寄らせない。

奇しくも、それがビネガーの弱点となった。

大型巨人は魔力を多く消費し、一ヶ月続く戦いが一週間で終わる事に。

 

 

歴史では5000人の兵士が死ぬ予定が、それを半分以下に減らせた。だがそれでもビネガーは亡骸を武器としている。ガルディア兵の遺体すらも利用する。魔族軍側の損害は0と言っていい。

ガルディアはビネガーが進行を諦めるまで一方的に防戦するしかない。

 

多数の死者を出した事実。残された遺族達の精神的後遺症は長らく続くことになる。

 

クロノ達は手伝える事はやろうと決めていた。

身の安全を確保しつつ、怪我人の運搬や救護等をする。兵士達を掩護して戦う。

 

 

クロノ達は一週間続く戦いの中で、伝説の勇者が砂漠の南にいるという噂を聞いた。

 

皆、絶望と背中合わせだった。いもしない勇者に縋りつきたかったのだろう。

 

ビネガーが進行を諦めて去った後、『噂の真相』の噂話が広まっていた。

勇者だけが持つと言われる勇者バッジを少年タータが身に着けていた事が噂の発端だという。

 

勇者バッジは中世においては勇者である事の証であり、少年タータがカエルの落し物を拾って身に着けていた。それが勇者が現れたという噂として広まっていた。

 

騎士団長によると、勇者とは、グランドリオンと勇者バッジ、共にセットであるという。

それらを最後に持っていたのはサイラスであり、バッジをカエルが持っているという事は、サイラスから受け継いだものかもしれないという。カエルは前線に戦いに向かったまま未だ戻って来ない。

 

ガルディアは前線で死んだカエルの遺体、それらを回収する兵員の募集を出した。遺体を放置していたら、後々ビネガーに兵士として利用される恐れがある。

 

クロノ達は世話になったカエルの為にも遺体を回収する兵員に志願した。

 

砂漠は、ガイコツ兵士の亡骸で埋め尽くされていた。そこに生きているカエルをみつけた。

 

カエルはビネガーとの戦いの後、ガルディア本土には戻らず、砂漠に残り遺体を運びやすい様に、一箇所に集めていた。

 

勇者の正体はカエルだった。でもガルディアでは誰もカエルが勇者だったとは知らなかった。理由を知りたかったクロノ達。

 

だがカエルはクロノ達の質問には答えなかった。

 

クロノ達が遺体の片付けをしていると、子供達が話しかけてきた。

子供達は助けを求めていた。子供達は勇者バッジの件でタータを嘘つき呼ばわりした。タータは引っ込みがつかなくなり、勇者である事を証明する為にデナドロ山に登ったという。デナドロ山は魔族の縄張りで、危険なところだという。

 

カエルは走り、デナドロ山へ向かった。

 

カエルにとって因縁の山であるデナドロ。そこでサイラスは焼かれた。

サイラスは自分を守ろうとして殺された。魔族に恐れ、腰が抜けて動けなくなった自分を守ろうとして。足手まといになった自分のせいで親友は殺されてしまった。

 

サイラスを殺した魔族は言った。

 

「腰抜けのお前にはカエルの姿が相応しい」

 

カエル姿になる呪いをかけられた。 

 

いっそ、殺してくれれば良かった。

 

カエル姿、それを見る度、親友を死なせてしまった悲しみと、情けなかった自分を思い出し、怒り狂う。この地獄を味わうくらいなら、いっそ殺してくれれば…

 

その考え方そのものが、情けなかった。

カエルはある時から、過去を振り返るのをやめた。腰抜けだったグレンの名前も捨て、カエルとして生きた。

 

過去を捨てた代わりに、死に急ぐかの様に危険な戦場に赴く様になった。

 

サイラスから死に際に受け継いだバッジとグランドリオン。そのグランドリオンは魔族に取り上げられ目の前で折られた。

サイラスの様に無残に壊された。

 

魔族は折った剣をデナドロ山の滝から投げ捨てた。

カエルは必死で探したが、片割れしか見つからなかった。

 

カエルにとってデナドロ山は負の記憶の集まる場所であり、目を背けたい場所だった。

 

カエルは逃げないと心に決めていた。サイラスにそう誓った。

だがカエルには今まで逃げ続けていた事がある。勇者バッジをつける事から逃げていた。

 

勇者バッジを着ければ「グランドリオンはどうした?」と人々から言われる。

魔族に奪われて折られた事。情けなくて決して言えない。先代の勇者達の名を汚す様で、どうしても勇者バッジを着けられなかった。

 

だが今回勇者バッジをタータが取り、そのタータはデナドロ山に向かった。これが単なる偶然といえるか?

 

 

「サイラス…」

 

カエルはサイラスに導かれている気がした。亡き勇者の魂が、もう一度この地に向き合えと言っている気がした。

 

カエルは山頂でタータを見つけた。

 

だがタータは夢か幻かふっと消えた。

 

タータの消えた場所にグランドリオンの片割れが落ちていた。

 

折れて滝に落ちた筈のものが、なぜ山頂に…

 

カエルはグランドリオン手に取ると、グランドリオンが喋っている事に気付いた。

 

「オレはグランだ。弟のリオンを探しているんだが、お前だろ? 弟を持っているのは。」

 

「お前を、探すの大変だったんだよ。子供に取り憑いて噂を流したり、幽霊やってみたり。」

 

グランは、タータ少年が持つ勇者バッジからリオンの匂いを感じたという。勇者バッジの持ち主がリオンの持ち主と思い探しまわったそう。

 

グランは子供達に憑依して、バッジを持つタータがデナドロに登ったという噂話を振りまいて、バッジの持ち主が来るのを待っていた。

 

 

「わかった? 分かったら早く僕を弟のとこへ連れて行きなさい。」

 

 

カエル「すまんが、まだ砂漠での仕事が…

 

 

クロノ達は言った。意味不明だけど、仕事は代わりにやっておくよと。

 

 

カエルはグランを弟に合わせに向かった。

 

グランとリオンが再会すると、大喜びし、互いに一つに合体し、元のグランドリオンに戻った。折れたキズがないどころか、新品の様な輝きを放つ。

 

夢か幻か、カエルはこの後グランドリオンから声が聞こえる事はなくなった。

 

 

カエルはクロノ達の元へ戻った。グランドリオンを携えて…

 

 

ボッシュとグランドリオン 

荷車を押して遺体を運ぶクロノとカエル

砂漠には一万体の骸骨兵の亡骸がある。

放置しておけばまたビネガーに利用されかねない。

タバンはブルドーザー風の車で骨を集め、海に捨ていた。

 

 

マール「ねえ、カエル。あのタータは幻だったんだよね? 勇者バッジは本物のタータがまだ持っているとして、取り返さなくていいの?」

 

カエル「いいんだ。バッジは元々重荷でしかなかったから。勇者バッジ、貰ってくれて助かってる。

 

ルッカ「もしかして、勇者バッジ、取られたののではなく、あげたとか?」

 

カエル「あげたら皆にオレは怒られるだろうな(笑) でも取られたとなれば不可抗力だ。皆が欲しがるから取られるのは仕方がない。」

 

 

ルッカ「にしてもグランドリオン…。折れたものが生き物みたいにくっついたの。まるで魔法ね…」

 

マール「魔法…。最果てのお爺さんなら、グランドリオンの正体知っているかも。」

 

 

カエル「最果て?」

 

クロノ達は歴史に影響を与えない程度にカエルに教えた。ハッシュという魔法に詳しい人物がいて、その人ならグランドリオンについて知っているかもしれないと。

 

カエル「ハッシュ…。ボッシュという似た名前なら知っているが…」

 

グランドリオンの鞘にボッシュの名前が掘られている。

 

マール「ボッシュ、ハッシュ…。なんだか共通点がありそうな…」

 

 

荷車を引いていると…

 

ルッカ「ちょっと、何あれ? 当面の戦争は終わった筈では…」

 

ガルディア本土から兵士が魔界に向けて出発していた。

 

現代の歴史の記録に無い出来事。クロノ達の介入で結果的に多くの人命を救えたこと。それをキッカケにして3000の兵士が特攻隊に志願していた。

 

ルッカ「どうして!? ガルディアは防戦一方だったはず。死ぬ為に行く様なものよ!」

 

兵士の列が連なる。カエルが事情を聞きに行く。

 

 

兵士「我々には心強い味方な現れたのだ!」

 

 

兵士の行列の上、空を浮き歩いている人間がいた。

 

 

兵士「彼の名はボッシュ。彼の奇跡のチカラで死んだ筈の兵士が皆、生き返ったのだ。怪我人も皆、傷が無かった様に癒やされた。」

 

 

原作のボッシュは現代の千年祭にいた。この物語では千年祭にはおらず、ボッシュはテレビを見ていた。

クロノ達が千年祭のタイムゲートに消える光景をニュースで見て、魔法でゲートをこじ開け、中世へとやってきていた。

 

戦争を目の当たりにしたボッシュは命の賢者としてそのチカラを存分に活かしていた。

 

ボッシュはこの時、魔界からジャキの魔力を感じていた。ジャキが魔界に捕われている思い込み、助けようと行動していた。

 

ボッシュはクロノ達の元へ舞い降りると、次々と死んだ兵士達を生き返えらせた。そしてカエルは特攻隊と共に魔界へと旅立っていく。

 

 

ボッシュはカエルの持つ剣から、グランとリオンに気配に気付いた。

 

グランとリオンは古代に生きていた精霊で、暴走する魔神機を止める為に合体し、赤き剣に憑依した。

赤き剣はボッシュが作り出した剣であり、ボッシュの魔力が込められている。

魔神機はラヴォスからエネルギーを抽出する装置であり、赤い剣はその作用を打ち消す為に作られた。

 

赤き剣にはラヴォスからエネルギーを奪う作用を打ち消す力が付与されており、赤き剣(グランドリオン)が魔族に効くというのは、実質的に魔族はラヴォスからエネルギーを得て力としているということ。

 

つまりグランドリオンの攻撃で魔族の防御力が低下するのは、魔族に供給されるラヴォスエネルギーを『断ち切る』という意味合いが含まれる。

 

原作では魔王に対して威力を発揮した。

その設定に無理やり整合性を合わせるとするなら、魔王は戦闘中にその場から一歩も動かなかった事が注目点になる。

たとえば魔王は魔法陣等をどこかに描いていてラヴォスからエネルギーを抽出して自らをパワーアップしていた。魔法陣から出るとパワーダウンするから魔王は戦闘中その場から動かなかった。

その証拠に仲間に加わった魔王にグランドリオンで攻撃しても防御力は下がらない。

 

 

 

「おお、グランとリオンか! お前さん達があの後(ラヴォスが目覚めた後)どうなっておったのか心配しておったが…」

 

「しかし、今もこうして剣に憑依しておるというのはどういう事じゃ?」

 

「そうか…。身を犠牲にしてしまい、そこから出られなくなっておったのか…」

 

「あいわかった。ワシがなんとかしてみせよう。」

 

ボッシュはカエルから剣を取り上げると複雑な術式、魔法陣を描いた。

 

グランドリオンは短い赤剣に戻り、グランとリオンが飛びだしてきた。

 

「なあに、心配するでない。グランドリオンより強い武器を後で作ってやるから。」

 

「それからそのカエル姿。魔族に呪いをかけたそうじゃが、ワシの力で元の姿に戻してやろう」

 

ボッシュはカエルの身体をあちこち触ると、元の姿グレンに戻す魔法を唱えた。同時に違和感に気付いたボッシュ

カエルにかけられた呪いに犯人(ジャキ)の魔力が僅かに残っていた。

 

 

〜魔王城〜

 

ボッシュがこの世界にいる気配を察知した魔王は空を飛んだ。

 

クロノ達の元へかけつける魔王。

 

魔王「まさか、じぃ…」

 

 

 

ボッシュ「ジャキ様…。まさかこの世界で悪さをしていたとは…」

 

魔王「ふん。また説教か…。

 

ボッシュ「魔力無き者は罪である。その教えは間違いであるとなぜ分からぬのですか!」

 

魔王「その教えを守った故に父上は魔力無き人間に消されたのだろうが…。そのショックで母は心と気を狂わせ、あの様な悲劇が起きてしまった。間違っているのはそなたの方よ…」

 

 

「世からしてみれば、魔力無きボッシュ。お前も罪人であるぞ」

 

ボッシュとジャキによる戦闘。空で激しい戦いを繰り広げた。

 

 

 

ボッシュは昔、ジャキの教育係をしていた。いつもの様に、おしりをペンペンと叩きたかった。だがそれは叶わぬ夢。

 

亀の甲より年の功。

魔学については古代の魔道書を読み込んでいたボッシュの方が遥かに知識量が多い。

魔力量では負けるが使える術の多様さでボッシュは圧倒的にジャキより強者だった。

 

ボッシュはジャキを封印し責任を果たした。

 

 
原始時代

クロノ達は古代人の強大な魔力を目の当たりした。現代の魔族世界もラヴォスに滅ぼされた未来も古代人さえいれば解決するかもしれない。クロノ達は古代に繋がるタイムゲートを探して原始時代に来ていた。

 

そしていきなりのピンチ。

 

ゲートを越えた瞬間から恐竜人と原始人との戦争の真っ只に巻き込まれる。

 

割愛だが未来で修理したロボがメンバーに加わっている。

カエルとボッシュはガルディアを守護し魔族の脅威から救う為、メンバーには加入しなかった。

 

ロボは頼もしく、非力なクロノ達を一人で守りきる。

 

人間と恐竜人と双方の遺体が散乱するなか、アザーラが徹底命令を出して去っていく。

 

残った原人達は風貌の異なるクロノ達を見て取り囲んでくる。簡易な石斧、石槍が牙を向ける。 

クロノ達がオロオロしていると。

 

「うんがろうがうんがろう?(お前たち一体何があった?)」

エイラが集団を分け入って、クロノ達の匂いを嗅ぎだした。

「ううんかをんがろうがうん(恐竜人とも私達とも匂い違う」

 

エイラ「特にお前、一番変わっているな」

 

エイラはロボの体をあちこちさわり、かじり、味見をする。

 

エイラ(まずい…。食物じゃない…)

 

クロノ達と言葉が通じない事が分かると、エイラは

「みんな! 新しい部族の発見だ!」

 

エイラが喜び、それを見た原人達も喜んだ。ウホウホとハイテンションになる。

   

エイラは恐竜人との戦いに向けて部族を統一していた。仲間が増えるのは大歓迎だった。

 

原作との違いは宴では歓迎されないこと。

戦争の直後であり、遺体への弔いで、葬儀に参列することに。

 

一息ついたところで

 

 

エイラ「最近、北の森に変わった生き物でるらしい。皆はヌウと呼ぶ。とても美味しいという噂。狩りに行こう!」

 

クロノ達はエイラの身振り手振りノリに誘われる。

 

ジャングルを探していると、川で水浴びをしているヌウを発見する。

だが一足先に恐竜人がヌウを捕らえた。

 

ヌウは足が細く、その割に身体は横に太く、走るのが苦手だった。

逃げようとしても逃げられなかったヌウは恐竜人に抱えられたまま川の上流へと連れ去られる。

 

一部始終を見ていたエイラ。恐竜人のアジトを見つけるチャンスと思い、追い駆けた。

 

 

竜人は北へ、プテランが上空を旋回しているの巣に近くにある森へ入った。

 

森の奥に恐竜人の巣と思われる竪穴を見つけたエイラ。

その瞬間、アザーラの特殊技、サイコキネシスを受けて、クロノ達は見動きが取れなくなる。

 

アザーラが姿を表すと、エイラの頭にテレパシーを飛ばした。

 

アザーラはエイラの脳内で会話を始めた。

 

 

 

 

 

「私はアザーラではない。アザーラは双子の兄弟で、我が名はアズーラである

 

「お前たち、ヌウをどうするつもりだった?」

 

 

エイラ「今晩のメインディッシュにと

 

アズーラ「やはりか…。しかし、あれはお前たちと我々の祖先である。食べるとは許されぬ事だ…

 

エイラ「そ、そせん? た、食べないのか??」

 

アズーラ「ああ、我らの身体の色をよく見ろ。

我らの様な緑種は草を食べて生きている。

お前達は我らを肉食獣だと勘違いしている様だが…」

 

アズーラは人間や肉食系の恐竜からヌウを保護する活動をしていた。

 

 

エイラ「恐竜人は人間を襲って誘拐するのではないのか?!」

 

アズーラ「アザーラは人間を奴隷の様に扱うが我々とは違う。あれは狂っている。」

 

 

エイラ「アザーラとその他の恐竜人をよく思ってないなら仲間になってくれ。共に戦ってくれ」

 

 

アズーラ「それはできぬ頼み事。我らの命は近い未来に消える運命。我々は残された時間をここで平和に過ごしたい…」

 

 

アズーラはラヴォスの飛来を予言した。原作ではアザーラはサイコキネシス、テレパシー、テレポートを戦闘中に使ってきた。未来予知の特殊能力があってもおかしくない。ラヴォス飛来後、えぐられた大地の微粒子が空に漂い、光が遮られ、氷河期に突入して恐竜人が絶滅する未来を語った。

 

 

エイラ「どうしてアズーラはここにいる? どうしてアザーラの様にティラン城で暮らさないのか?」

 

 

アズーラ「兄弟喧嘩だ…」

 

アズーラが森に隠れているのには理由があったが詳しくは語ろうとしなかった。

 

 

 

エイラ達はヌウを諦め、森を出た。

 

食料未調達のまま村へ戻った。

 

その頃、ロボは村にて原始人達の会話を記録、分析していた。翻訳に必要な言語パターンを解析し終わる

 

 

 

エイラ「このカチコチの生き物面白いな。エイラにくれ」

 

 

ルッカ「エイラ! 私達、空間の揺らぎ(ゲート)探しているのだけど、見た事ない?」

 

エイラ「おお、それならあるぞ。西の山々を超えた先の平原に。

 

ルッカ「良かったら案内してくれない?

 

エイラはプテランを呼び、クロノ達を案内した。

 

 

クロノ達は平原のゲートから飛び込んだ。

原始時代から約5000万年前。

陸上にはまだ生物が存在してない。

そこにラヴォスの子供達がいた。

 

海の中には魚人がいて、海底都市があった。

 

海底都市は魚人達の超能力で作られていて、二足歩行のクロノ達は珍しがられて歓迎を受ける。

 

浦島太郎の様な歓迎を受けたクロノ達は魚人達の特殊能力。テレパシーにて、未来から来た事を読み取られる。

未来世界の調査の為に、スパイ魚人がクロノ達の仲間になる。

 

スパイ魚人もまた監視されていた。

 

宇宙の外から魚人の生体を監視していた宇宙人はタイムゲートの存在を知り、騒ぎになった。

宇宙人達は自らの文明に革命が起こるかもしれないと浮足だった。

 

小型のスパイロボをクロノ達に取り付けた。