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カエルは魔界との国境付近、デナドロの砂丘地帯で兵士達の陣頭指揮をとっていた。

ここ数ヶ月、近隣諸国で魔族との戦争が頻発していた。戦況は人間界が有利であったもののの、ガルディアでも今日明日にでも開戦の兆があるとし、防衛網の強化をしていた。同盟国であったイギリスは表向きは権勢を維持している様だが、一部には陥落したとの噂も広まっていた。人に擬態する魔族らにより王家は乗っ取られた可能性があるとの報告がなされていて、そんな折、カエルの元にリーネが行方位不明になったとの報告が兵馬から届いた。人に擬態する魔族の件もある。人間同士(リーネと知り合い)しか判らない合言葉を決めているとはいえ、無理矢理聞き出す事も可能である。リーネがもし魔族に誘拐され、魔族がリーネの姿をして王宮に戻るのであれは、イギリスの二の舞いになるかもしれない。緊急事態でありカエルは急ぎ、ガルディアへと戻った。

『なに!? 一度見つかったがまた行方不明になっただと??!』

400年前、17世紀初頭のヨーロッパの小国ガルディアにて、奇妙な報告を受けたカエル。報告内容は、兵士の一人が王妃とおぼしき女性をトルース山にて発見するも、その女性は人違いであるとの供述をした。身なりからして異国の服装をしていて、当初は単なる人違いとも思われたが、その女性に近付いてきた同じく異国風の男が王家のペンダントを所持していた為、その男が誘拐犯で王妃は脅されていて助けを求められないだろう可能性を考慮しつつ、兵士はパイク(槍の一種)を構え警戒体制に。しかし王妃から一瞬目を離した隙に王妃は消えていて、側にいた男は捕まる事を恐れたのか逃亡を図った。

王宮は妃の捜索を継続すると共に逃げた男の行方も追いかけている最中だという。

報告を受けたカエルは兵営から飛び出し、民家の屋根にジャンプし、屋根から屋根へと跳び移りながらリーネと男を探した。

犯人の特徴は異国風の容姿かつ、赤髪であり、目立つ様相をしていた。カエルは直ぐにそれらしき犯人を発見した。捕えて尋問にかけるより、尾行して妃の居場所を探るのが得策だと判断した。


男は民家から服を盗み、着ていた衣類の上から着た。その後、人目を避ける様にしながら路地裏を抜け修道院の方角へと向かった。男は謎の黒い物(無線機)に独り語りかけていた。その奇妙な光景に疑問視していると、男は修道院へと入った。
カエルも尾行がバレないように姿勢を低くして入り壁を登った。
天井の梁から様子を伺うカエル。

院内には修道女の他、数名の一般信徒が祈りを捧げている様子で、男も祈りを捧げていた。

 


~クロノ~

逃亡中のクロノは一般信徒に紛れ込むようして椅子に座った。
息を整える。マールが消え、この先どうすればいいのか考えていると、視界が暗くなる。
信徒らに囲まれ、その影で暗くなっていた。信徒らは院の戸口から外の様子を見た。人気がないのを確かめると、扉を閉める。クロノに麻袋を被せて視界を奪い、叫べないように猿ぐつわをして奥部屋に連れ込んでいく。

 

クロノが奥に連れていかれた後、フロアには見張り役の修道女が一人残った。
 カエルは天井から降りて「どういう事か説明しろ」と脅した。背後から剣を当てられた修道女は小さく独り言を呟く。それは短縮された呪文であり、仲間と交信する為の魔術が発動される。施設内にいる信徒は警戒態勢になりカエルを包囲した。

カエルの剣を当てられていた修道女は「脅されてしかたなくやっているんです。助けて下さい!」とカエルに同情を求めた。
カエルが女を守るように前に出ると女は擬態を解除し、魔族の姿となってカエルの首に噛みついた。

カエルの身体は人間より10倍伸縮性に富んでいる。カエルのジャンプ力は背丈の10倍を越える。即ち筋力も人間の10倍を越え、移動速度も10倍を越える。眼も大きく背後からの攻撃にも反応できるが、不意打ちは避けられなかった。だが丈夫な体が幸いし、カエルの受けたダメージは小さかった。

「お前が噂のカエルか…。半年前、アルファド様の魔術によってカエルにされたというが…。しかし副作用から人間を超越した力を得たという…。だが、それはもはや魔族同然の力…。どうだろう?スパイとして我々に寝返る気はないか?」

「…悪くない話だが、お前達の組織はどういう目的で人を誘拐しているのだ?食べる為か、奴隷とする為か?」

「ふふ、我々はガルディア市民に成り済ます為の材料を集めている。ガルディアを内側から支配する為の重大な仕事を任されている。」

「 …アルファドは人間界へは干渉しないとの声明を出していたはずだったが…。一体、誰の指示なのか?」

「我らの主を知りたければ、まずはその剣をコチラに預けて貰おうか…」

剣を鞘に仕舞うカエル、渡すのかと思いきや居合い抜きで攻撃する。
一体を倒したかと思いきや、小さな虫に変身され、攻撃が当たらない。

魔族に包囲された状態だったカエル。真正面からの戦いは不利と判断し、壁に向かって跳ねた。壁に着地する瞬間のバネ運動の貯めと蹴った瞬間の勢いを合わせて時速200kmで包囲の外側に出ると着地点で一体の魔族を倒せる。そこから壁など足場にして高速で次々に魔族を攻撃し、逃げる間もなく制圧してくのが、これまでのカエルにとっての勝利の方程式だった。
だが、攻撃の手応えが全くない。魔族は先程と同じく小さな虫へと変身し、外へ逃げ出す。

西側魔族に多いとされる擬態の特性に関してカエルが知っていたのは同身長サイズの生物への変化しかできず、また変身する姿が複雑なものである程、時間がかかるというものだった。
それとは全く異なる擬態能力を持った魔族については恐らく魔術を利用していると判断できるが考察する材料が少なくカエルはお手上げだった。

幸い院内の魔族は全て逃げていきリーネは無事であった。リーネが監禁されていた部屋の鍵についても魔族が落として行ってくれていた。捕らわれた者はリーネ以外にも修道女数名と大臣と兵士二名がいた。兵士の一人は喉を潰され助けを呼べないようにされていた。

 

リーネの無事が確認された頃、王宮にいる大臣(ヤクラ)がカエルの元にかけつけた。交信の魔法でカエルの進入を知ったヤクラは部下達では勝てないカエルを制圧するつもりだった。

修道院での一件についてカエル達の口封じしなければ人間界で魔族が大規模な悪さをしている話が魔界にも伝わりかねない。魔王アルファドに睨まれたくなかったヤクラは揉み消しに必死だった。

そもそもリーネ誘拐はやり過ぎでもあった。人間界の行政システムは複雑であり、成り済ます相手は政治に関連する議員や役人であるべきだった。
リーネには魔族を感知する能力、魔力感知能力があるという噂があった。生かしていれば擬態を見破られる恐れがあり、殺すべきと思っていたが、人間にそのような特殊な力がある事自体が信じられなかったヤクラは西側魔族がリーネに成り済ましている可能性を考慮した。
ガルディア人にどれだけの西側魔族が潜伏しているのか調べる為にリーネを捕らえたもの時間の無駄だった。

 

 


 
会場には武器類は売ってないし、会場の出入り口は金属探知機による武器等の持ち込みがないかを診断される。
千年祭会場には魔族がひしめき、テロを企ていてる。

 

 

 

魔族達に包囲された状態だったカエル。真正面からの戦いは不利と判断し、天井に向かって跳ねた。天井を蹴った勢い(時速200km)で包囲の外側に出ると着地点で一体の魔族を倒す。
そこから壁など足場にして高速で次々に魔族を倒していく。
逃げる間もなく倒されていく。

 

倒れた魔族から鍵を拾い、リーネが監禁された扉を開ける。リーネが救出された頃、連絡係のコウモリが王宮にいるヤクラの元へ。ヤクラは急いでカエルの元へ向かった。

 

 

 


院内には修道女が