クロノはじめ

ルッカ「クロノ!来て早々に悪いのだけど私の家からテレポットのサンプルを持って来てくれないかしら?」

サンプルとは出力の低い小型のテレポート装置であり、ルッカは本格的な大型装置を制作する前に小型の模擬装置を造っていた。

「記者達がなんか煩くてね…。公開テスト前にサンプルの取材もしたいらしいのよ。バイト代弾むからお願い!」

ルッカのブース前にはカメラを抱えたマスコミ関係者、多くの取材陣がいる。ルッカは高校の文化祭で開発した歌うセキュリティロボが世界的に有名になり、億万長者となった。またそのAI技術が数々のIT技術に活かされた経緯もあって知らない人はいない有名人になっていた。

「開演まであと30分か…その間に取材終わらせるとして、10分で取って来れるかしら…」

ルッカは急速に有名人となった事もあって自宅には人が殺到。家族は南部のリゾート地区パレポリに引っ越していた。元の家は現在ルッカ専用のラボになっている。

「本当なら父さんか母さんに頼もうと思ったのだけど…」

ルッカの父タバンはルッカとは別の発明に関わっていた。別のブースで忙しく手が離せない状態だった。ルッカの母ララも新型義足のモデルとして公開ショーの準備に追われていた。

クロノはルッカの助手(夏休みバイト)であり、大会関係者として開演前から会場を自由に行き来できた。会場の外には真夏にも関わらず1000人を越える行列ができて、クロノはその横を素通りする。

テレポート装置の存在については大会を盛り上げる為にとルッカは開演直前までその存在を公にしてこなかった。世紀の大発明でありながら誰にも公開しないで秘密にしているという。クロノはあまり理解できなかった。もし自分ならYouTube等で代々的にアピールしてしまうからだ。

ルッカいわく「これは到底発明品と呼べる代物ではないわ。私にもテレポートの原理が全く判らないのだもの。なにせ実験的に作ったAIが勝手に弾き出したプロトコルをモデルに作っただけだしね。」

機械によって偶然発見された仕組みであり、ルッカ自身その原理すら判らないのだという。その様な発明を大手をふって自身の発明品だと思えない彼女は素直に喜びきれないのだという。せめて自分以外には素直に喜んで欲しいとの願いから開演直前まで内緒にするサプライズを計画したのだそう。

普段自信家である彼女からは到底想像つかないしおらしさ。クロノの中でルッカへの高感度が3上昇した。

尚、テレポート装置に関して、クロノ以外で唯一知っていたのは大会委員会であるが、その委員会から世紀の発明情報が一切漏れなかったのはある意味凄いことである。建国千年を記念した祭りという事もあって気合いが入っているのかもしれない。

 

 

 

 

魔族は400年前に絶滅計画により滅ぼされた設定。人間に擬態できた魔族は生き残ってきたが、


テレポートの原理自体についてもルッカ自身が理解できず、